2018年の日本経済は、世界のマーケットを席巻してきた中国経済の成長鈍化が鮮明になり、併せて米・中の経済摩擦、英国のEU離脱問題などの対外的な課題が重なって大きな閉そく感が漂う年だった。

 しかしながら元気な中堅・中小企業はネガティブな要因をものともせず独自の経営手法で活路を開いている。

 原点回帰で、顧客第一主義のサービスで販路を拡大する企業もあれば、IoTやAIを武器に、大きな成果を上げている企業も増えている。本特集では、独自の経営力でさらなる成長が期待される企業にスポットを当てた。(『経済界』企画部)

 

日本を代表する存在に成長したかつての注目企業の現在

 

幾度となく逆境を乗り越えてきた孫正義・ソフトバンク社長

孫正義

孫正義・ソフトバンク社長

 

 人気経営者のアンケートをとれば、毎回1位に輝くのがソフトバンクグループの孫正義社長だ。その売上高は今や10兆円に迫り、最終利益も1兆円を突破した。しかも創業から37年を迎えた今でも、成長のスピードを止めようとしないところに、孫正義という経営者の凄みがある。

 しかし今、ソフトバンクグループは逆風真っただ中にある。

 昨年12月に通信子会社であるソフトバンクを上場、2・4兆円の巨額調達に成功したものの、上場直前には通信障害が発生。そのため上場直後に株価は大きく下落、いまだ公開価格の1500円までは回復していない(1月25日現在)。さらには基地局の資材を調達していたファーウェイが米中経済戦争の激化により市場から締め出される可能性が高く、その場合、次世代通信システム「5G」の戦略を根本から見直さざるを得ない。

 また、今ではソフトバンクグループの成長エンジンとなっている10兆円ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」の前途も不透明だ。

 きっかけは、昨年10月のサウジアラビア人記者の殺害事件。この事件でサウジのムハンマド皇太子の関与も疑われ、国際的な批判が高まった。SVFは、孫氏と皇太子の信頼関係に端を発しているだけに、SVFに対する視線も厳しくなり、これまでなら投資を歓迎していた企業でも、距離を置く動きが出てきている。

 しかも年末にかけての株価の低迷で評価益が縮小、投資戦略の見直しも余儀なくされた。SVFからの収益が低下すると、そのままソフトバンクグループに跳ね返る。その意味で、このビジネスモデルは正念場に差し掛かっている。孫氏はどう打開しようというのだろうか。

 孫氏の評価としてよく挙がるのが、「構想力」や「実行力」だ。それも孫氏の魅力だが、同時に逆境を乗り越える力にも卓越したものがある。

 孫氏は過去に幾度も危機を乗り越えてきた。余命5年の宣告を受けたこともあれば、ITバブル崩壊後、巨大負債により株価を大きく下げた時には、「孫正義もこれまでか」との声が上がった。しかし全て乗り越え、さらなる成長を果たしてきた。その意味で、今こそ孫氏の本領発揮の場面である。   

先を読む力と好奇心で新ビジネスを創出する澤田秀雄・エイチ・アイ・エス会長

澤田秀雄

澤田秀雄・エイチ・アイ・エス会長

 

 エイチ・アイ・エス(HIS)およびハウステンボス(HTB)社長の澤田秀雄氏は、昨年12月、HTBに中国資本を入れることを明らかにした。

 HTBの再建は今では語り草になっている。

 1992年に開業したものの、入場者数が伸び悩み万年赤字となり、野村證券のグループ会社が再建役を買って出たが赤字から脱却できなかった。ところが2010年にHISがスポンサーとなり、澤田氏自らが社長として乗り込むや、1年目で黒字転換。以来今日まで黒字を維持している。

 当時を振り返り澤田氏は、「売り上げを2割伸ばし、コストを2割下げたら黒字になる。それを事前に頭の中で描くことができた」と言うが、自らハウステンボスに住み、率先垂範で再建に取り組む姿勢が社員を動かした。

 中国資本の出資を仰ぐのは、ここに来て入場者数が頭打ちになってきたから。そこで今以上に外国人観光客を増やし、さらなる成長につなげようという目論見だ。現状に満足せず、今後を予見し、常に先手を打って進化を続ける。それこそが澤田氏の真骨頂で、それはこれまでの足跡にも表れている。

 澤田氏がHISの前身となるインターナショナルツアーズを起業したのは1980年。格安航空券業者としてスタートし業績は急拡大。96年にはスカイマークエアラインズ(現・スカイマーク)を立ち上げ、航空産業に翼を広げる一方で、モンゴルのハーン銀行等、金融業界にも進出する。

 さらに数々の再建案件が持ち込まれるようになり、ハウステンボスだけでなく、鉄道会社やバス会社などの再生を託される。そしてそのほとんどで、再建に成功した。

 澤田氏がハウステンボス内で実験的に始めたロボットホテル「変なホテル」は、今では全国11カ所にまで広がり、今後もオープンが相次ぐ。これなど、人手不足とそれに伴う人件費高騰をいち早く見抜いた澤田氏の慧眼といっていい。

 最近のインタビューで澤田氏は、HTBの社長を近々退任し、HISに軸足を移すことを明らかにした。その一方で宇宙ビジネスへの関心を示すなど、その好奇心は旺盛だ。澤田氏の進化はまだまだ続く。   

 

根っからの規制緩和論者で携帯市場に参入を果たした三木谷浩史・楽天会長

三木谷浩史

三木谷浩史・楽天会長

 

 今年10月、楽天が携帯電話事業に参入する。既に「楽天モバイル」というサービスはあるが、これは他社から回線を借りるMVNOによるもの。10月からはいよいよ自前回線によるサービスを本格的にスタートさせる。

 これにより、日本の携帯市場は、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク、楽天の4社体制となるが、3位のソフトバンクでさえ4千万ユーザーがいることを考えると、事実上ゼロから参入する楽天の戦いが厳しいものになることは容易に想像がつく。

 ただし、楽天には他の3社にはない楽天経済圏がある。楽天を率いる三木谷浩史社長はそこに勝機を見いだそうとしている。

 三木谷氏が楽天を創業したのは1997年(当時の社名はエム・ディー・エム)。楽天市場というECモールからのスタートだったが、その後、楽天トラベル、楽天カード、楽天証券、楽天銀行と新規参入を増やしていき、楽天会員となれば全てのサービスが利用できる楽天経済圏をつくり上げた。

 楽天の携帯電話のユーザーは、楽天のサービスを利用する際、さまざまな恩恵を受けられるようになる。

 三木谷氏は参入に当たり「楽天には会員がたくさんいる。複合的に絡めながら、より利便性が高い、そしてリーズナブルな価格、快適な接続を実現できればと思う」と抱負を語っていたが、その言葉どおり、会員向けサービスと価格を訴求力にユーザーを増やしていく方針だ。

 ソフトバンクが携帯市場に参入したのは2006年のこと。当初はソフトバンクが安値攻勢をかけたことで、日本の携帯料金は大きく下がった。しかし以来十余年が経ち、3社独占体制は硬直化している。その結果、菅義偉官房長官から「携帯料金は4割下げられる」と指摘されるほど、料金も高止まりとなっている。そこに楽天が参入する。

 三木谷氏は以前、本誌のインタビューに「世の中を変えていく原動力、いわば現代の亀山社中になろうというのがわれわれの思い」と語っていた。携帯市場にどんな新しい風を吹かせようとしているのか。その全貌は間もなく明らかになる。      

 

2019年に注目される企業の強みと特徴とは

 

 さて、2019年はどんな企業の成長が期待できるだろうか。

 まず「IT+α」の実力を持つ企業。今やAIやIoTをキーワードに、さまざまなサービスが開花している。小売、物流の世界では商品の受発注から顧客管理までなくてはならない存在で、販促や決済にブロックチェーンを利用する動きも広がっている。ユニークなところでは仮想通貨のマイ二ング事業でも斬新な企業が出現した。また、ITを武器に世界の潮流になっているグリーンエネルギー事業の効率化でも大きな成果を生み出している企業が現れた。今やあらゆる企業にとって必須の重要アイテムになっているITの利活用でビジネスをサポートする企業が大きく飛躍しようとしている。

 次に「顧客第一主義」。ビジネスの世界では老舗の大企業から新興ベンチャーまで多くのプレーヤーがしのぎを削っている。売り手と買い手の情報格差でいびつな商習慣がはびこっていた時代もあったが、ITの進化で市場の見える化が加速、エンドユーザーの利益を無視したビジネスはもはやできなくなっている。加えて、顧客重視とともに大事なのは従業員満足度だ。利益至上主義は今や時代遅れで、顧客や社員を大事にしない企業は永続しない。

 「人材」に重きを置く企業も注目だ。企業にとって人材は富を生む源泉である。商品やサービスが優れていても、そこで働くスタッフに魅力がなければ業績が伸びることはない。デジタルマーケティングが全盛の時代にあっても役職員が経営理念を共有し、ベクトルを合わせて目標に向かって闘わなければ企業の存続は危うくなるだろう。人材会社は転職や紹介だけでなく、教育、研修でスキルアップをサポートすることも必要で、専門領域やグローバル人材の発掘が今や喫緊の課題になっている。

 最後に「先見性と改革力」。現在、オンリーワンの魅力で成長を遂げている企業が増えている。例えば、世界のコンテンツ産業をリードする日本のテレビゲームは、機能や操作性が進化しているだけでなくビジュアルに優位性がある。そのCG制作のエキスパート集団の中には、地域おこしの一翼を担う企業も現れた。また、リテールビジネスの主役になったECサイトに掲載する商品を自動撮影する企業のトップランナーは、他の追随を許さない。古くからある「焼肉食べ放題」や「家庭用医療機器」「レジャーホテル」も時代のニーズに即応した創意工夫で顧客の心をつかみ、新しいステージに上がろうとしている。

 以下、これらキーワードから厳選した企業を挙げる。

 

2019年の注目企業一覧

 

IT+αで時代をリードする企業7社

アシスト

Abalance

ADVASA

CS-C

J&M HOLDINGS

ゼロフィールド

イノベーション・ロジスティクス

顧客第一主義を貫く企業9社

キャンディル

ミマコーポレーション

シニアライフクリエイト

キング/ゴリラソース

センチュリオン

パートナーズ

Best Delight Group

アイビーエス

CLOVER

「人材」で勝負する企業5社

ガネット

アレックスソリューションズ

ルナサンド

アカオアルミ

天真堂

オンリーワンの先見性と改革力を持つ企業6社

カーレントサービス

プラスプ

ワン・ダイニング

ASIA PROJECT SUPPORT

ディッジ

アポロクリエイトホールディングス

 

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