多くの経営者が目標とする株式上場。しかし、上場に掛かるコストや時間、その他諸々の条件を考慮して、「上場は到底無理」と諦めてしまうケースも少なくない。そんな経営者にとって有力な選択肢となるのが東京証券取引所の運営する第五の市場TOKYO PRO Marketへの上場だ。2018年に同市場に上場を果たした、株式会社ニッソウの前田浩社長に話を聞いた。[AD]
取材協力者プロフィール
前田浩(まえだ・ひろし)1961年生まれ。東京都出身。高校中退後、芸能プロダクションに所属し、ナイトクラブやホテルラウンジなどでピアニストとして活動。その後、インテリア関連会社を経て1986年に独立。1988年にニッソウを設立する。小中規模不動産会社を主要顧客とし、現在1600社ほどと取引がある。2018年にTOKYO PRO Marketに上場を果たす。
TOKYO PRO Marketとは
東京証券取引所が運営するプロ投資家向け市場。一般的な株式市場と比べ上場審査など上場準備の期間が短く、決断から1年以内の上場も可能になる。株主数や時価総額等といった要件が大幅に緩和されており、上場までのコストそして上場後の維持コストが低く抑えられるのも特徴。一方、一般投資家が参入できないことから、資金の流動性が低いというマイナス面もある。
2018年にTOKYO PRO Market上場を果たしたニッソウ
東京都世田谷区に拠点を構えるニッソウは、年間売上高約20億円、従業員数約40人のリフォーム会社。賃貸物件の原状回復工事やハウスクリーニング、リノベーションなどを手掛ける企業として、約30年間営業を続けてきた。
社長の前田浩氏は、創業当時から上場を目指してきたという。最初は2000年を目標にしてきたが叶わず、2005年ごろから再び意識を強めた。その後、地道に売り上げ増加と規模の拡大に取り組んだ結果、年商10億円を突破、経常利益も数千万円になり2018年にTOKYO PRO Marketに上場し、長年の目標を達成した。
前田氏はいう。
「われわれのような中小企業が最初に目指すのは、東証マザーズやジャスダックなどの市場が一般的です。TOKYO PRO Marketの知名度は少しずつ上がっているものの、関心を持つ経営者はまだ少ないです。一般投資家が参入できない市場ということで、上場メリットが良く分からない、というのが主たる理由のようです。ですが、自分の体験に基づいて言うと、上場してみると想像していた以上にさまざまなメリットがあることが分かりました」
ステップアップの手段としてのTOKYO PRO Market
前田氏が挙げるTOKYO PRO Market上場のメリットは、まず、将来的に上の市場に上場するための練習ができること。上の市場への上場意向企業は、主幹事証券会社からコンサルタントを受ける中でさまざまな要求に応えていく必要があるが、既にTOKYO PRO Marketに上場し適時開示もしていることで、しっかりと対応が出来るとのことだ。
「法令を順守し社内規程を整備し、かつリスクコントロールもしっかりしないといけないので、内部統制など決済のやり方までガラリと変わりました」という。
企業としての体制がしっかりすること以外にも、前田氏が強調するのは周囲の見る目が大きく変わったことだ。
「東証マークの入った名刺を出せば、名刺交換相手もそれなりの態度をしめしてくれ、社員も誇らしいでしょうし、家族に対しても『ウチの会社上場してるんだよ』と言えば安心してもらえるということです」
世間からの信用が高まれば、今後の規模拡大に向けた人材獲得にも有利になる。
取引先も同様だ。プロマーケットの上場後に、前田氏は実験的にそれまで取引のなかった上場大手不動産企業数十社に面談の手紙を出したところ、1割以上の会社から反響があり驚いたという。ニッソウの主要顧客は中小の不動産会社だが、上場で信用度が上がったことで、新たな取引先の開拓にも繋がることが実感できた。
「ここまで変わるなんてTOKYO PRO Marketに実際上場するまで分かりませんでした。そしてさらに次のステップへのいわば登竜門にもなるということを、世の中の経営者に伝えたいですね」
上場メリットを活用する重要性
前田氏が語るように、TOKYO PRO Market上場は将来的にさらに上の市場に鞍替えするための手段としても有効になりそうだ。 この点について、前田氏はこう指摘する。
「このマーケットに上場した会社さんの中にTOKYO PRO Market上場のメリットを活用しきれていない会社が多いのは事実ですね。次に進むためには売り上げそして利益を上げなければいけない。そのためには商売にプラスになるようにどんどん信用力をつけないといけない。だからTOKYO PRO Market上場した事実を積極的に告知する必要があるんです」
実は、ニッソウは広告・宣伝に力を入れて事業を拡大してきた会社でもある。前田氏は創業当時、自作のチラシを1日千枚個人宅にポスティングする作業を、台風の日も元旦も2年間休まず行った。3千枚配って1件仕事が取れる程度の確率だったが、それでも採算は取れた。
その後も、売り上げの大半を広告・宣伝につぎ込むことで業績を伸ばしてきた。そんな経験を積んできたからこそ、上場に関しても広くPRする必要性を感じているのだ。
参入が少ないニッチな場所で目立つ大切さも、事業を通じて学んだ。顧客志向を掲げ、常に「他人にどう見られるか」を意識して行動するのが前田氏の姿勢。これがさらに上の市場への挑戦に際しても、証券会社が自分たちに何を求めているのか、どうすれば歓迎されるのかという視点を持つことにつながっている。
「多くの人がTOKYO PRO Marketを低く評価しているのは間違いだと実感しているので、迷っている会社はぜひ上場チャレンジすることをお勧めします」
と、力を込める。
自社ブランディングと将来の成長を目指す企業経営者にとって、TOKYO PRO Market上場は有力な選択肢になりそうだ。
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