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【企画特集】関西特集

長引くコロナ禍と資源高、物価高で企業の設備投資が冷え込み、個人消費にも陰りが見える中、関西経済は復活に向けて力強く動き始めた。主要産業の核である観光産業は「水際対策」が一部緩和されたことでインバウンドが戻り、京都、奈良などの観光地はもちろん、大阪市内の飲食店も賑わいを見せている。

「大阪・関西万博」の開幕まであと2年、今後、国際的なイベントも数多く予定され、超高級ホテルチェーンの建設ラッシュも続いている。国際金融都市構想やスタートアップ育成の取り組みなども本格化する。本特集では、関西経済の現在と未来を展望する。

2023年 関西特集 関西経済! 次の一手!

総論 2023年 関西経済圏の動向

コロナ禍を乗り越え、関西経済復権に向けた正念場の年に

2022年の関西経済は、コロナ禍に翻弄された1年だった。しかし政府の「水際対策」の緩和を受けて11月に入ると関西各地の観光地には訪日外国人客が増加、久々の賑わいを見せている。経済活性化の起爆剤になると地元財界が期待する25年大阪・関西万博の開幕まで2年余りとなった。円安、資源高騰、物価上昇などの厳しい状況が続く中、23年は関西経済復権へ向けた正念場の年となりそうだ。

円安、資源高、物価上昇で個人消費や投資に暗雲

 2022年はコロナ第7波、第8波が猛威を振るったが、ウィズコロナが浸透した春以降、行動制限が解除された。「景気が本格回復する」という期待が高まったものの、ロシアによるウクライナ侵攻と急ピッチの円安が予想外の物価高を招き、関西経済復活の足かせとなった。

 まずロシアによるウクライナ侵攻を受けて西側諸国が経済制裁に踏み切ったため、世界の原油生産量の12%を占めていたロシア産の供給が減少し、原油価格が急騰。この結果、世界各国は歴史的な高インフレに苦しみ始めた。日本総合研究所によると、22年の世界全体の消費者物価は前年比9%台の上昇となる見込み。これは1995年以来27年ぶりの高い伸びという。

 こうした高インフレ抑制のため、米国の中央銀行に当たる米連邦準備制度理事会(FRB)はハイペースの利上げを断行した。2022年3月に始まった利上げは6月以降、4会合連続で通常の3倍に当たる0・75%引き上げられた。この結果、投資家は利上げにかじを切る米国と日本の金利差を強く意識することとなり、円安ドル高が急速に進んだのだ。

 大阪税関の10月の近畿圏貿易概況によると、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は642億円とわずかながら黒字を確保したものの、前年同月比8割超も落ち込んだ。特に、天然ガス・製造ガスの輸入額は1674億円と10月としては過去最高を更新している。原油・粗油も1407億円と19カ月連続で前年同月を上回った。輸出額も伸びたが、それを上回るペースでエネルギーを含む輸入額が膨れ上がったため、貿易収支が悪化した。

 大阪市の11月の消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合指数が4・3%上昇。大阪市の物価上昇率が4%台に乗るのは、81年11月(4・0%)以来、実に41年ぶりだ。こうしたコスト増は、企業の設備投資を抑制し、個人消費の足かせになる恐れがある。それでも、関西経済への期待感が高まるのは、大阪・関西万博に向けたインフラ投資が本格化しているためだ。

高級ホテルが続々誕生「国際金融都市構想」も

 京都や奈良など日本を代表する観光地が集積する関西圏では、海外の超高級ホテルチェーンが続々と誕生する予定だ。英ホテル大手、IHGホテルズ&リゾーツは23年5月にも、日本初進出の高級ホテル「voco大阪セントラル」(全191室)を大阪市西区に開業する。地下鉄の大阪メトロ四つ橋線本町駅と肥後橋駅の間の京町堀エリアに立地。市内では旗艦の「インターコンチネンタルホテル大阪」(北区)に次ぐグレードだ。

 IHGは「ホリデイ・インエクスプレス大阪シティセンター御堂筋」(中央区)を21年12月に開業し、京都市でも最高級ホテル「リージェント京都」「シックスセンシズ京都」を出す計画がある。

 また、米ホテル大手のヒルトンは、JR大阪駅北側の再開発エリア「うめきた2期」に最上級の「ウォルドーフ・アストリア」ブランドのホテルを早ければ万博開幕前に開業し、富裕層の宿泊を見込む。

 前向きな動きの背景には、企業や消費者がコロナ禍の収束を意識し始めたことがある。

 国内では既に2つの海外製コロナ治療薬(飲み薬)が承認されているが、共に投与対象が重症化リスクのある人に限られている。これに対し、緊急承認制度第1号として承認された塩野義製薬(大阪市)の「ゾコーバ」は軽症・中等症患者に投与できるのが特徴で、普及すれば風邪薬のように使える。そうなれば、国内でもマスク着用を求められる場面は減り、大阪・関西万博の集客にも弾みが付きそうだ。

 大阪府・市は、万博と並んで「国際金融都市」の実現を目指している。22年12月には吉村洋文知事がロンドンの金融街シティなどを訪問し、投資家や金融関係者に大阪の魅力を伝えた。構想では、24年度までにユニコーン(企業価値10億ドル以上の非上場企業)3社と、スタートアップ(新興企業)300社を創出する目標を掲げた。欧米に比べ、新興企業への投資不足が国内産業の新陳代謝を阻害する要因とも指摘される中、大阪の金融都市で新たな価値観を生み出せるか。

 新年は関西経済の「反転攻勢」から目が離せなくなりそうだ。