石原伸晃経済再生担当相が進行役を務め、安倍晋三首相らと有識者が海外経済情勢について意見を交わす「国際金融経済分析会合」が3月に始まった。目的は、5月下旬に開かれる主要国首脳会合(伊勢志摩サミット)に向けた勉強会。ただ、講師の先頭バッターには、経済成長を優先するアベノミクスの考え方に近いノーベル経済学賞受賞者が呼ばれ、来年4月の消費税率10%への増税を見送る布石ではないかとの観測も上がっている。
3月16日の初会合には、ノーベル経済学賞受賞者で米コロンビア大教授のジョセフ・スティグリッツ氏が出席した。同氏は世界経済について、「2016年は、リーマンショック後で最悪だった15年よりも弱体化する」と指摘し、特に中国経済の減速が深刻なものになるとした。
そして、低迷の根底には「総需要の不足」があると分析。消費税は総需要を増やすことはできず、来年4月の増税は「タイミングでない」と述べ、先送りを主張した。世界的な一流学者の言葉だけに、影響力は大きいとみられる。
問題は、スティグリッツ氏の分析する経済情勢が、安倍首相が増税延期の条件として掲げる「世界経済の大幅な収縮」にあたるかだ。
足下をみると、年明け以降の中国失速を機に金融市場が混乱し、消費者のマインドが冷え込んでいる。政府や与野党の関係者の間では、「消費増税でさらに個人消費が冷え込めば、日本経済の景気回復は腰折れする」との懸念が膨らんでいる。安倍首相も「現在の消費は弱い」との認識だが、世界経済の先行きが日本経済に与える影響をどう判断するか注目される。
会合はサミットまで5回程度、開かれる。今夏にあるかもしれない衆参同日選を見越し、「会合は首相が増税延期を宣言するためのお膳立てにすぎない」との見方も市場には上がる。
ただ、政府内には「世界経済は回復基調にある」(石原経済再生担当相)として予定通り増税するよう主張する声も多く、ギリギリまでせめぎ合いが続きそうだ。
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