総務省が米アップルと携帯電話大手3社の取引実態の是正に向け、アップルのスマートフォン「iPhone」だけを安く売る「実質0円販売」をやめさせる行政指導を行ったのに続き、経済産業省はアップルやグーグルがスマホの基本ソフト(OS)の寡占化に基づくアプリ(実行ソフト)開発会社への圧力を問題視し、公正取引委員会の調査をほのめかしている。アップルにとっては、端末の販売方法に続きアプリ市場への支配力にも規制当局の手が伸びることになり、最大の優良市場である日本で踏んだり蹴ったりの情勢だ。
経産省はアップルとグーグルのOSによる寡占状態が続くスマホ市場のアプリ取引実態に関する報告書を9月15日に公表した。公取委と合同で約20社に聞き取り調査を行い、結果をもとに有識者研究会がまとめた。両社がアプリ開発会社に決済手段を提供して手数料を取る一方、アプリ開発者の価格設定に制約をかけるなど競争環境に悪影響を与えている状況を指摘。是正を図るため、公取委の強制調査の可能性にも言及している。
報告書によると、OS提供者がアプリ提供者に対してオンライン方式のアプリストアを利用する際に自社の決済方式を利用するよう求めるとともに、収入の30%程度の手数料を徴収していた。ユーザーが実物の商品に記載されたシリアルナンバーをアプリ内で入力してデータを入手するといった販促活動も制限していた。
また、アプリストアを利用させる条件として米ドル価格に対応した120円、240円といった価格設定しか認めず、自由な価格設定ができない場合が多いという。
研究会の議論では、こうした取引が「優越的な地位の濫用に当たり得る」との指摘があったが、報告書では法令違反の有無について結論付けるのは避けた。ただ、取引実態の把握は継続的に続ける方針で、独禁法違反の事例があれば厳正に対処すると明記。OS提供者とアプリ開発会社の秘密保持契約で調査が難航した経緯から、独禁法40条に伴う強制調査の実施が必要と指摘している。
東京国税局はアップルの音楽・映像配信子会社「iTunes(アイチューンズ)」(東京都港区)に対し利益の一部について海外グループ会社経由での源泉徴収漏れを指摘。iTunesは120億円追徴された。iPhoneを軸に日本で我が世の春を謳歌してきたアップルだが、最強の垂直統合型ビジネスも綻びが目立ってきた。
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