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哲学は自然に醸成、理念は意志で作る
経営哲学と経営理念。この2つはどこが違うのか。簡単に言えば、哲学は個人に属し、理念の主体は企業だ。つまり経営哲学とは、経営者個人が、自らの経験や思想のもとに築き上げるもので、経営理念とは、企業経営における根本的な考えを公的に定めたものだ。そしてこの2つは密接不可分な関係にある。
創業者が経営理念をつくる場合、その多くは自らの経営哲学を反映したものになるのは必然だ。理念には創業者自身の思いが反映されている。34ページに登場したクレディセゾンの林野宏社長は、自らの経営哲学はセゾングループの総帥だった堤清二氏の影響を大きく受けたと語っている。堤氏は、辻井喬の名で詩や小説を書いた芸術家でもあり、その感性が企業経営に大きな影響を与えていた。この場合、堤氏の哲学がセゾングループを規定し、理念として明文化されている。
一方サラリーマン経営者の場合、理念が哲学に影響を与える。就職先を決める場合、条件面だけでなく、理念に共鳴できるかどうかを重視する人は多い。そこで何年か過ごし、経営者として経営哲学を持つ頃には、理念は自分の血となり肉となっている。当然哲学は理念の影響を大きく受けることになる。これをみても理念と哲学は独立して存在するものではないことが分かるだろう。
もう一つ、理念と哲学の違いを言えば、哲学は知らないうちに醸成されるのに対し、理念はつくろうという意思のもとにできあがる。いつの間にか経営理念ができていたというのはあり得ない。
経営理念のつくり方と生かし方
では、経営理念をつくるにはどうしたらいいのか。
インターネットで「経営理念のつくり方」と検索すれば、その種のサイトを簡単に見つけることができる。また、経営理念をつくることで企業業績の向上につなげる経営コンサルタントもいる。そうしたところを利用すれば、経営理念をつくるのは難しいことではない。
経営理念には4つの要素がある。①ミッション=企業が果たすべき役割②バリュー=社会に提供する価値③ビジョン=目指す姿④カルチャー=行動規範で、多くの企業は、この4つの要素を盛り込んだ経営理念をつくり、それを具体的に行動基準に落とし込んで、社員のやるべきこと、やってはいけないことを規定する。
しかしつくっただけでは、経営理念はただの文言にすぎず、早晩形骸化することになる。経営理念をつくるうえで重要なのは、その過程にある。その作業を全社的イベントとし、社員の共通認識にまで高めることができるかにかかっている。
策定にあたっては、まずは経営者が自分の考えを社員に対し、会社が何のために存在するのか、どこに向かおうとしているのかを説明することから始まる。そのうえで社員を巻き込んで経営者と社員が一体になって理念をつくっていく。こうやって出来上がった理念は経営者の哲学と社員のコンセンサスを反映したものとなり、社員にしてみれば、自らが作成に参加したという意識が理念を遵守するモチベーションとなる。
もちろん、策定したあとでも、常にそれを意識させるためには努力が必要だ。そのひとつの方法がクレドカード。理念や信条をカードにし、社員は常時携帯することで、理念を自然と理解することができる。楽天やグリーなど最先端の企業でも、クレドカードを導入しているところは多い。
経営理念を生かすも殺すも、不断の努力次第ということだ。
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