貸会議室・宴会場の全国ネットワークで急成長するティーケーピーの年間利用企業数は約2万4千社。企業にとってなくてはならない存在として高いリピート率を誇り、安定した収益を確保している。他社の追随を許さない独自の経営戦略を聞いた。
イベント運営全般をワンストップで受注可能
「空間再生流通事業」を標榜し、遊休不動産や土地の活用を通じて社会貢献を目指すティーケーピー。昨年3月には東証マザーズ上場を果たし、勢いはさらに加速している。その理由を「いち早く全国ネットワークを構築したことによって企業のさまざまな要望に応えることができるようになったのが当社の強みでしょう」と、河野貴輝社長は分析する。
多い企業は年間270回も同社の会議室を利用するというが、その場所や規模がバラバラなのでどうしても自社で用意することができない。そこで必然的に、ティーケーピーの会議室を利用することとなり、今や企業にとって必要不可欠な存在となっている。
取り壊しの決まっている六本木の小さな雑居ビルからスタートした貸会議室事業も、現在では国内および海外7都市で2014室、総座席数14万8千席を備えるまでに拡大した。ネットワークがここまで飛躍する大きなきっかけとなったのが、品川にあるホテルの宴会場を賃貸契約することにより2011年に誕生した「TKPガーデンシティ品川」だ。当時、東日本大震災の影響で企業のイベント自粛が相次ぐという逆風の中でのスタートとなったが「ピンチをチャンスに変える」と前向きに考えたことが同社を筋肉質な企業へと変える追い風となった。
「当社の顧客となる企業では、社内会議だけではなくさまざまな規模のセミナーやイベントを開催しています。大手シティホテルの宴会場などが手がけてきたそのようなイベントも、すべて当社で受注できる体制を整えるのが狙いでした」
会議と宿泊を融合したハイブリッドなホテル
このオープンによって、同社は貸会議室事業から派生する周辺ビジネスへ本格参入する新たなフェーズに入った。施設内で働くサービスパーソンや厨房、シェフも一括して取り込むことにより、外注していたケータリングサービスなども自社で手がけることが可能になった。そして、ここで蓄積したノウハウをベースに、ハイグレードな宴会場を矢継ぎ早に全国展開していく。
「大手シティホテルでも、全国各地にバンケットを有するところはあまり見当たりません。当社では、ホテルグレードから会議室グレードまで、多様化する顧客のニーズに応える6つのブランドを掲げた施設を全国ネットで用意しています」
昨年、イベント運営会社メジャースを子会社化したことで、会場の設営から備品の準備、当日の人員手配、受付業務までワンストップで提供するイベント空間プロデュース事業もますます強化されている。
会議の開催に伴った宿泊需要を吸い上げるためのホテル運営にも乗り出している。アパホテルのフランチャイズ事業として、14年8月の「アパホテル〈TKP札幌駅前〉」を皮切りに、すでに5棟を開業。20年にかけてさらに5棟がオープンする予定で、計10棟約2千室のアパホテル最大のフランチャイジーとなる。
また、地方のホテルや旅館についても、泊り込み研修ができる施設としての再生に取り組んでいる。
「地方には、せっかく温泉が出てもうまく集客ができていないホテルや旅館がたくさんあります。そうした施設を借り上げて、当社が運営するリゾート型宿泊研修施設『レクトーレ』として再生していけば、地方活性化にもつながります」
今あるものを皆でシェアしようという「シェアリングエコノミー」の時代と言われて久しいが、こちらは文字通り有効に活用されていない時間をお金に変える「アイドルエコノミー」を実践する戦略といえそうだ。
商業施設や百貨店への入居を積極的に推進
今年3月、大塚家具の新宿ショールーム催事場の運営を受託し、イベントホールの新ブランドとして「CIRQ(シルク)新宿」をオープン。11月には札幌市の丸井今井札幌本店南館に貸会議室、貸しホールを出店する。さらに、今秋開業予定のJR田町駅前の田町ステーションタワー内に、同社でも最高クラスのオフィスバンケット「TKPガーデンシティPREMIUM田町」がオープンする予定だ。
「駅から近い物件への入居は、顧客満足度の向上につながります。オフィスビルやホテル宴会場に加えて、駅ナカ・駅近の商業施設や百貨店への入居も積極的に進めていきます」
こうして急速に拡大する同社のビジネスだが、それを支えていくには人材の育成が欠かせない。
「マニュアル化するのは難しい仕事なので、メンターとなるような先輩がしっかり指導する環境をつくる必要があります。また、これまでは営業本部長から部長、課長、リーダーと階層化されていた組織を見直し、層を一気に薄くして風通しの良い組織づくりを心がけています」
空間再生からスタートした同社のビジネスだが、「血液が身体を巡るようにビジネスでいうと当社が心臓部となってデトックス機能を持ち、うまくいかなくなった店舗や事業を再生するように静脈から動脈に戻す。そんな事業ができれば、より社会に貢献できると思います」という河野社長。「ファイティングポーズを取らなくなったら会社は終わってしまう」という言葉通り、攻めの経営でさらなる事業拡大を目指していく。
[会社概要]
設立/2005年8月
資本金/2億8,779万円
所在地/東京都新宿区
売上高 286億円(2018年2月期)
従業員数/2,732人
事業内容/ホテル宴会場・貸会議室運営事業、ホテル&リゾート事業、料飲・ケータリング事業、イベント空間プロデュース事業、コールセンター・BPO事業
https://www.tkp.jp/
【シェアリング エコノミー】関連記事一覧はこちら
【マネジメント】の記事一覧はこちら
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan