経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

「滞在時間」でポイントが貯まる 店舗集客にイノベーション―ポイントマーケット

2019人材育成企業21

(『経済界』2019年11月号より転載) 

高福俊明氏

ポイントマーケット代表取締役CEO 高福俊明(たかふく・としひろ)

消費者行動を変える可能性を持つ、新しいポイントサービスが登場した。「ChronoPoint(クロノポイント)」を手掛けるITベンチャーのポイントマーケットは、消費者の店内に滞在する「時間」に着目。新しいコミュニケーションを生むサービスとして、大きな期待を集めている。

「滞在時間」に着目したポイントサービスが登場

 商品やサービス購入のロイヤリティーとして還元される「ポイント」。矢野経済研究所の調べによると、2018年度の国内ポイントサービス市場規模(ポイント発行額ベース)は1兆8930億円で、今後も拡大が予測されている。購入金額に応じて発行されるポイントは、今やバラエティーに富み、クレジット利用によるもの、飛行距離によるマイレージ、ネットショップへのログインポイントやアンケートに答えると加算されるポイントなど多種多様である。賢くポイントを貯めて稼ぐ「ポイ活」は、家計節約やお小遣いになるとして特に女性に人気だ。

そんな中、購入金額ではなく店舗の「滞在時間」に着目したポイントサービスが登場した。ポイントマーケットが企画開発する「ChronoPoint」を使えば、飲食店やイベント、催事場やショッピングモールなどに滞在しているだけで、商品を購入しなくてもポイントが貯まる。専用アプリと発信電波によって位置情報を把握するBeacon(ビーコン)とを連動させており、ビジネスモデル特許を申請している。

ポイントは支払いに使うだけでなく、さまざまな形で還元可能だ。イベント導入例として、今年5月に大阪府と関西テレビ放送などにより開催された「アンチエイジングフェア」では、福引き抽選券として使用。旅行券3万円の景品に盛り上がりを見せた。来場者からは「ウロウロするだけでポイントが貯まってうれしい」、イベント主催者からは「昨年よりも来場が増え、ブースでの試飲やお試し利用者が増加した。2階までくまなく回遊された」と実感を得られた様子。

昨今はウインドーショッピングの機会をインスタグラムなどスマホに奪われ、実店舗は滞在時間長期化の対策が大きな課題となっている。店舗売り上げの80%は2割の優良顧客によって生み出されるように、お店のファンになってもらうには、長く楽しめる仕組みと空間づくりが必要だ。「ChronoPoint」は消費者に新たな購買行動プロセスの機会を与え、購買意欲を向上させるきっかけとなり得る。

高福俊明氏は、消費者が時間を価値に変えるという概念を「行動インセンティブ」と捉えている。行動によって新しい商品サービスの発見、試食や体験による感動、人との出会いを生む。このサービスによってリアルなアクティビティーを活性化できるという。

行動ビッグデータによりマーケティング確度を向上

 同サービスの最大の利点は、消費者行動をビッグデータとして活用できること。行動分析はオペレーション改善や、広告戦略などさまざまな可能性を持つ。例えば、百貨店催事の出展企業に、回遊傾向に基づく場所代(ブース出展料)の根拠を示すことができる。また、消費者属性に応じて確度の高い広告を出すなど効率の良い集客が可能になる。個人の行動が流出してしまうのではないかとの懸念には、アプリダウンロード時の入力情報を、ビッグデータに有効な国籍、生年月日、性別にとどめることでクリアした。

同サービスの店舗運営への利用価値にも注目だ。

飲食店では「カウンター席のご利用でポイント2倍」「あと30分以内の退店でポイント進呈」など、加盟店からアプリユーザーへのお知らせ配信によって、混み合う時間や空間を分散させるピークシフトを可能にし、効率性を高められる。

また飲食店や美容室など接客の良い従業員に対し、消費者がポイントによって評価する従業員教育は、アシスタントやアルバイトにとってモチベーションになる。

高福氏がこのサービスを始めたきっかけは、飲食店によって集客力の差を感じた時だった。料理のおいしいお店に足を運んでもらえる来店動機をつくれないか、リピートしてもらえる仕組みをつくれないか、「時間を価値に変える」視点はここから生まれた。

「時間は誰しも平等です。限りある人生で有効に使っていただきたい」と高福氏。

現在、飲食店、エステ、ネイルサロン、ショッピングモール、飲食フェスや大型イベントなどさまざまな業種業態ですでに導入が始まっている。前例のないサービスに共感を得た代理店提携は100社以上という展開の速さ。開発段階では、店舗やユーザーの声を全員でヒアリングしながら進めてきた。そのスタンスを保ち、加盟店フォローでサービスを拡大していく。

「私たちなしでは生きていけない、そういわれる世界を創ります」。高福氏は、2025年開催の大阪万博での導入が決まれば、来場者の回遊促進とピークシフトに貢献できるとにらむ。「私たちにとって初めての万博。世界中の方に楽しんでもらえるよう盛り上げていくことが、大阪の地場企業である私たちのミッションです」。勢いに乗るポイントマーケットに期待は高まる。

会社概要
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設立 2019年1月
資本金 2億4,757万5,000円(資本準備金含む)
所在地 大阪市中央区
事業内容 ポイント事業におけるマーケティングおよび販売業務、
スマートフォン向けアプリ開発および販売、SNS運用支援
https://www.point-market.co.jp/
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