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「ハイドロ銀チタンのパワーで世界をアレルギーから救いたい」―岡崎成実(DR.C医薬代表取締役)

岡崎成実イラスト

ゲストは、花粉症などのアレルギーやウイルス・感染症の抗体医薬品事業を手掛けるDR.C医薬代表の岡崎成実さん。同社の「ハイドロ銀チタンマスク」は光触媒作用を応用し、病気の原因となるたんぱく質を分解、無害化します。岡崎さんの熱意を感じる対談となりました。(『経済界』2021年5月号より加筆・転載)

岡崎成実・DR.C医薬代表取締役プロフィール

岡崎成実(DR.C医薬代表取締役)
(おかざき・なるみ)1989年高知大学医学部卒業、付属の産婦人科勤務。90年東京医科大学麻酔科勤務。98年レディースクリニック開業。2004年感染症対策として光触媒研究開始。07年DR.C医薬設立、代表就任。産婦人科・麻酔科医師。

コロナ禍で需要が急増したハイドロ銀チタンマスク

佐藤 歌舞伎役者の市川海老蔵さんと渡辺直美さんのCMでおなじみの「ハイドロ銀チタンマスク」。私も愛用しています。もともと花粉症などのアレルギー症状を改善するために研究開発、製品化されたマスクだそうですね。それが実験でインフルエンザウイルスにも有効と分かり、コロナ禍の現在は高機能マスクとして大人気です。

岡崎 ありがとうございます。ただ、誤解してほしくないのは、私たちはマスク専業の会社ではないということです。仰るとおり、このマスクはアレルギー症状やウイルス感染の予防や治療を目指して開発した製品ですが、他にも医療従事者のメディカルウェア、タオル、スリッパ、帽子、最近では空気清浄機なども製品展開しています。

佐藤 そのハイドロ銀チタンはどこがどうすごいのですか?

岡崎 花粉症やアレルギー性鼻炎、喘息などの症状は、花粉・ハウスダスト・カビの微小たんぱく質抗原によって引き起こされます。ハイドロ銀チタンは、光触媒作用でたんぱく質を水や二酸化炭素に分解し無害化する酸化チタンに、たんぱく質の吸着性を高めるハイドロキシアパタイトを複合させた光触媒物質です。専門機関や大学との共同研究で、マラリアの原因である蚊の卵のふ化率を抑制し、インフルエンザウイルスも分解できることも分かっています。

佐藤 そんな高機能マスクのブレークの陰で、2020年6月に景品表示法違反というニュースが出ました。何が問題になったのですか?

岡崎 「花粉を水に変えるマスク」というコピーの表示です。研究開発に長年携わってきた私たちからすると、「水に変える」は物理的な化学分解を表しただけ。しかし、消費者からすると、「花粉がすーっと溶けて水になる」という誤解を与えるという指摘で、その点は思慮不足を反省しています。一方で、ハイドロ銀チタンの技術や効果に対する国からの改善の指摘はありませんでした。

佐藤 技術には疑いの余地がなかったということですね。となると、成長企業の有名税ですね。

岡崎 周りからもそう言われました。私は医師ですが、世界を目指すベンチャー企業の経営者でもあるので、そうした荒波に打ち勝っていくしかないと思っています。

ハイドロ銀チタンマスク
マスクの種類は豊富。有名スポーツブランドや老舗タオル製造会社とコラボレーションしたものも

世界の花粉症患者を救うオンリーワンの技術

佐藤 岡崎さんは医師として新宿にクリニックを経営されていたにもかかわらず、なぜ苦労をしてまで医薬品・医療機器の研究開発を続けているのですか?

岡崎 私が創業した産婦人科のクリニックには約70人の医師がいますが、それでも1日に診ることのできる患者さんは数百人です。しかし、例えばマスクを医療機器や医薬品代わりの製品として開発できれば、それを着ける数十万人の症状を改善できますし、薬を服用できない人にも手を差し伸べられます。

 例えば、花粉症は世界に8億人、日本に4千万人の患者さんがおられます。私は幸いにもハイドロ銀チタンというオンリーワンの手段を見つけ製品化できたので、それで人助けをしたい。周りから反対や意見も頂戴しますが、どんなに苦労しても続けるつもりです。

佐藤 素敵です。その思いが起業のきっかけになったのですね。

岡崎 最初は製薬会社に開発を依頼しましたが相手にされず、周りからも「新薬開発は臨床試験が大変」と反対ばかりされて腹が立ち、自分で全部やろうと07年に今の会社を設立しました。苦労したかいあって、マスクは医療機器として承認申請の最終段階まできています。

佐藤 研究開発から製品化まで数年と短期間でこられていますが、一般に研究開発の期間や費用はどれくらいかかるものですか?

岡崎 新薬や製品開発には約20年ほどを要します。私たちが数年で製品化できたのは、アレルギーの原因のたんぱく質を既に見つけており、生成する手間を省けたこと、また医師なので実験がしやすかったからです。通常は費用も500億~1千億円、年間の動物実験と臨床試験だけで30億円程度かかりますが、これも10分の1程度に抑えています。それでもこれまでの開発費用などに数十億円かかっており、心は何度も折れかけましたが(笑)。

 これが大学病院で研究の種を見つけても、製品化に至らない理由です。しかも本来は、製薬会社、研究施設、ベンチャーキャピタルが三位一体で取り組むところを、私1人で始めました。今は協力してくれる方も増え、本当に感謝しています。

佐藤 岡崎さんの一貫した熱意ある行動が周りを巻き込んできたのですね。今後の夢は?

岡崎 全世界のアレルギーに悩む人たちを救うため、当社の製品を届けるために、数年以内に上場を目指しています。病院で医師として患者さんを診ていたとき同様、1人でも多くの方から笑顔とありがとうを頂けたらうれしいですね。

佐藤有美と岡崎成実(DR.C医薬代表取締役)
「世の中の花粉症に悩む人たちにぜひ使ってほしい製品です」(佐藤)

聞き手&似顔絵=佐藤有美
構成=大澤義幸 photo=川本聖哉