社員の経営者志向を促し顧客ファーストで急成長　プラセム　川島裕司

勢いのある福岡のベンチャー企業。その中でも急成長しているのがＷＥＢコンサルティング事業を主軸とするプラセムだ。急成長を後押ししている、同社の川島代表に「顧客ファースト」の考えや経営哲学、今後のビジョンを聞いた。（雑誌『経済界』2023年1月号より）

家業を離れ地域企業を支援するＷＥＢコンサルへ

　ＷＥＢコンサルティング事業を主力に創業４年目で売上高19億円を突破し、今期は30億円に迫る勢いのプラセム。川島代表は「従業員は30人ほどですが、自分のことより顧客、部下のことを考える優秀な人材が集っています。売上増は結果にすぎません」と好調な業績にも浮かれることはない。　

　大学卒業後、東京のトップクラスのＩＴベンチャー企業に入社。家業を継ぐため福岡に戻った際「地域企業のＷＥＢ環境が想像以上に遅れていることに驚きました。３年間だけお手伝いするつもりが、企業の規模を問わず多くの支持をいただいたことで起業することになりました」

　現在、同社が契約する企業は大手も含めて約３００社。川島代表は、サービス提供の質を重視しており「顧客へのサービス提供の質を落とすくらいであれば、新規受注を完全にストップしよう。何よりも顧客を大事にすることを忘れずに」と「顧客ファースト」の姿勢を従業員に説いているという。

　その言葉を裏付けるように、21年は延べ約６カ月間、新規受注を止めて顧客サービスに徹した。それでも売上高は前年比約１５０％と、技術や知識は折り紙付きだ。22年４－９月期には、Ｙａｈｏｏ！が、広告を総合的に活用し運用知識や優れた実績があると認めた三ツ星パートナーに九州・福岡の企業としては初めて認定されている。

対価は高水準の年収。経営者志向の人材が多数

　「良い人材が確保できない」「育ててもすぐ転職してしまう」という悩みを抱える企業は少なくないが、川島代表は真逆の発想だ。

　「社員には個人でも稼げる力を付けるよう促しています。そのためにこの会社で実力を身に付け、顧客の信頼を勝ち得る仕事をするようにとアドバイスしています」

　「土日に対応してくれないか」「急遽キャンペーンをやることになった」といった顧客の要望は珍しくない。担当者がすぐに対応できない場合もあるが「言葉数は少なくても、時間的には遅れても、必死に考えて対処する姿勢こそ顧客の納得感を高めます。独立する際はその顧客を引き抜けるくらいになってほしいですね」と笑い飛ばす。

　当然、時間の使い方を考えることも大切。高校野球の例をあげて「放課後の限られた時間内に楽しく野球をする選手と、甲子園を目指し自宅に帰っても自主練をする選手との違いがあって当然」と言い切る。その先にある「個人名で戦えるプロの世界」を目指す人材を川島代表は求めている。

　その対価は年収だ。社員の平均年齢は27歳。27歳のプレイヤーで年収７００万円、29歳のマネージャーで年収１２００万円クラスもいた。東京と比べ家賃など物価が安い九州・福岡では破格の金額である。

　そんな同社では、ＷＥＢ事業に加え、人材と不動産の両コンサルティング事業にも力を入れている。人材事業では現取締役が入社前からフリーランスで行っていたアイデアや業態を拡大した「福岡転職Ｐｌｕｓ」や「福岡就活Ｐｌｕｓ」といった紹介サービスが好評だ。

　「ＷＥＢを使えば多くの企業から求人を募ることは比較的簡単ですが、弊社は求職者に寄り添い時間をかけてマッチング先を探すことで、先発大手との差別化ができています」

　また、アフターコロナを視野に不動産事業に関心を抱いていたが、社内に専門家はいなかった。そのため「２年間は勉強して、その後結果を出してほしい」と担当社員に指示。仲介から始め、現在では売買を手掛けるまでに成長した。「社員の多様な考えに耳を傾け、一度信じたら全面的に任せる。失敗したら『叱る』が、責任は私が取る」との経営哲学を語る。

　幼稚園の頃から経営者の親に「どんなところでも一番前にいろ」と教えられた。意味が分からないままに、運動会では常に先頭を歩き、学級委員選挙ではいち早く手を挙げた。

　「先頭に立つことで、いろんなタイプの人と接触する機会が増え、その集団をうまく運営するために、自分とは考えの違う人がいても耳を傾け、良いアイデアを吸収する姿勢が身に付きました」

　今後の展開としては海外市場の開拓に挑む。「日本国内で着実に実績を積んでいくことはもちろんですが、海外拠点の設立を足掛かりに世界的なコンペに挑戦したい」とＷＥＢの先にある広大な可能性に賭ける。会社の規模は、と尋ねると「目が届く50人くらいの体制が理想的。それ以上大きくなると子会社化がいいかも」と笑顔を見せるが、その言葉に「既に信頼できる数多くの経営者を育てている」という自信がのぞく。