経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

北海道経済の持続的な成長の実現に向け、一丸となって取り組む 北海道銀行 頭取 兼間祐二

北海道銀行 頭取 兼間祐二

北海道銀行では2022年4月から新中期経営計画がスタートした。課題解決力の強化、DX推進、環境分野への取り組み強化をキーワードに、地域・取引先とともに持続的な成長を実現すべく動き出した。北海道の現状と同行の取り組みを聞いた。(雑誌『経済界』「新時代を切り拓く北海道特集」2023年2月号より)

北海道銀行 頭取 兼間祐二
北海道銀行 頭取 兼間祐二
かねま・ゆうじ──1964年北海道生まれ。慶應義塾大学卒業。87年北海道銀行入行。経営企画部長などを経て2021年6月よりほくほくフィナンシャルグループ副社長兼北海道銀行頭取に就任。

建設投資だけに依存しない新たな成長戦略を

── 北海道経済の現状と将来展望をお聞かせください。

兼間 コロナ禍の影響が長引いておりますが、人流は回復しつつあり個人消費は持ち直しの傾向にあります。一方、急激な円安の進行が物価高を招き、企業経営や家計の負担増を招いていることは懸念材料です。

 将来を展望すると北海道は新幹線の札幌延伸や多数の市街地再開発プロジェクトを控え、さらには2030年冬季五輪の招致にも取り組んでおり、札幌を中心とした道内の建設投資計画は当面の期間、高水準が続く見通しでこれは明るいニュースです。ただし、30年以降の札幌市街地での大型工事は減少が見込まれており、建設投資に依存しない成長可能な仕組みを今からつくる必要があります。

── ゼロカーボンやサステナビリティなど新しい観点も必要ですね。

兼間 北海道は風力、太陽光発電など再生エネルギー基地として大きな可能性を有しており、これらの開発投資は地域創生に貢献し、北海道が掲げる「ゼロカーボン北海道」を推進する上でも重要です。

 また、石狩湾新港では再生エネルギーを活用した新たな地域価値の創出に動き出しています。再エネを100%地産地消する「REゾーン」を設けて発電するだけでなく、脱炭素、グリーンエネルギーに重点を置く企業による新たな投資を呼び込む動きにもつながっています。再エネを活用した地域活性化の好事例です。

 さらには農業従事者の高齢化や人手不足などを背景に注目が高まるスマート農業を例に取ると、各種センサーなどを活用した作物の生育状況の把握に加え、トラクターの遠隔操作など、各種実証実験が進んでいます。本格的な導入が実現すれば、農業DXを通じて農作業の省力化・効率化に伴う生産性向上の効果が期待できます。

 一方、地域企業のサステナビリティ向上を支援することは、取引先の企業価値を高めることにつながっており、また地域の脱炭素化にも貢献することから、各種支援メニューの充実化を最優先の取り組み事項として進めています。例えば、SDGsの各項目に対するお客さまの取り組み状況と対応すべき課題を整理する「SDGs取組支援サービス」や、融資を通じてお客さまのサステナビリティの課題解決をサポートする小口型サステナブルファイナンス「ほくほくThree Targets」では「何から始めていいかわからない」というお客さまに対してサステナビリティの取り組みを推進するきっかけを提供しています。

投融資やビジネスマッチングでスタートアップを支援

── 取引先へのDX導入において課題などはありますか。

兼間 まずは取引先企業のDX分野におけるニーズや課題をヒアリングし、さまざまな形で支援する取り組みを展開しています。以前はITを使うこと自体に後ろ向きだった意識から、昨今のDXというキーワードにより何かしらの対応をしていかなければならないという意識に変わってきたように感じています。だからこそ、われわれ金融機関は今後の経営方針まで含めた事業内容や業務のやり方を理解し、DXを目指す手段としてニーズに合わせたITツールをご案内することが必要です。

── Uターン支援の取り組みについて教えてください。

兼間 15年6月から人材紹介のビジネスマッチングを開始し、19年3月にはUターンに強い地場の人材紹介会社と提携して本格的に取り組んでいます。道内企業がUターン人材に求める主なスキルは、新規事業の開発、社内のデジタル化、М&A実務、役員経験、コンプライアンス強化などが挙げられます。お客さまのニーズをしっかりヒアリングして道内の中小企業の人材に関する経営課題の解決を図っていきます。

── スタートアップ支援についてどのような取り組みがありますか。

兼間 当行ではファンドを通じた資金支援を行っています。21年11月には、北海道ベンチャーキャピタルと連携して北海道グロース1号ファンドを設立しました。新たな事業に取り組むスタートアップへの投資を通じ、地域経済の発展と産業振興に寄与することを目的としたファンドです。現在は、北海道大学発のベンチャー認定企業2社を含む合計5社に対し投資を行っています。

 また、ビジネスアイディアの事業化に向けたサポートや、地元企業とスタートアップ企業のマッチングを目的としたビジネスコンテスト「X-Tech Innovation」を、当行を含む地銀5行と共催しています。当行では16年から開催しており、今年度で7回目の開催となります。FinTech、AgriTech、TravelTech、HRTech、HealthTechなど、北海道が抱える多様な課題を解決すべく、さまざまなスタートアップに参加いただいており、投資や融資、ビジネスマッチングなどを通じてサポートしています。今後も将来の北海道経済を担うスタートアップの成長に向けた支援を行っていきます。