「CRMは企業の頭脳」と話すアーカス・ジャパンの松原晋啓社長。外資系大手コンサルティング会社を経て、日本マイクロソフトで「DynamicsCRM」の立ち上げに関わり、CRM市場の活性化に大きな成果を上げてきた第一人者が今、新たな挑戦を始めた。(雑誌『経済界』「関西経済! 次の一手!特集」2023年3月号より)
松原晋啓・アーカス・ジャパン社長
最高峰のマーケティングで1to1のアプローチを
── CRMとは何ですか。
松原 一般的な認識では、顧客の情報を管理し購買行動を分析するツールを指しますが、実はそれは副産物で、本来は顧客をより深く理解するための仕組みです。
先進国では、顕在欲求は既にある程度満たされています。その先にあるのが潜在的な欠乏欲求。欲求はあるものの明確な自覚がなく、何を欲しているのか自分でも理解できていないものです。これを見つけ出し、商品を投入すれば爆発的な人気が出ます。例えばiPhone。CRMは顧客の潜在欲求を読み解き1to1でアプローチし、商品の購入を促します。CRMが成功すれば、営業がいなくても商品が勝手に売れるというマーケティングの最高峰です。そして、これを具現化したのが当社の電子行商人プラットフォーム「Arcury(アーキュリー)」です。
── Arcuryの特徴は。
松原 高度な顧客理解によって、ニーズに合致する商品を的確に提案するAI機能をECサイトに組み込むことができます。最大の特徴は、提供の方法ですね。日本でCRMを導入している企業は数多くありますが、成功事例は少ない。CRMを適切に行っていないからです。私たちはシステムを導入して終わりではなく、CRMのレクチャーから課題の洗い出しといったコンサルティング、製品の保守運用までトータルでサポートすることで、ビジネスを成功へと導きます。
── どのような企業向けですか。
松原 当社の製品は中小企業の味方です。目標は地方創生。そのためにも、日本の企業の9割を占める中小企業の活性化が欠かせません。一緒にビジネスを育てていきたいので、初期の導入費用は無料。商品の売り上げに応じた手数料のみを頂く料金プランを展開しています。
人とサービスをCRMでつなぐ町おこし構想も実現可能に
── Arcuryの今後の展開は。
松原 動画配信を用いて商品提案ができる「Arcury for Live Commerce」や位置情報をリアルタイムで把握する「Arcury for Location」など、Arcuryと連携できるECサービスを複数用意し、順次リリースしています。こうしたソリューションツールを活用することで、通常のECサイトに付加価値を与えて相乗効果を生み、ブランド力を強化できます。さらにこれらのツールをフル活用することで、世界の注目を集める町をつくることも可能です。
── 世界の注目を集める町とは。
松原 住民や行政、病院、学校、店舗、観光などあらゆる情報をポータル化して連携させた町です。行政サービスや観光案内、物件マッチングなどあらゆる情報を提供できるほか、教育や医療ともスムーズに連携できます。また、ローカル5Gやドローン向けのIoTサービスと連携させて災害時の人命救助に役立てることも可能です。住民情報は高いセキュリティで管理されるため、常時オープンにするわけではありませんが、いざという時には即座につながって支え合える昔ながらの町の風景をITの力で実現できるのです。
── 町おこしの鍵がCRMにある。
松原 人とモノをつなぐリレーションシップの考え方そのものがCRMです。プラットフォーム自体は既に実現可能な段階にありますから、スピード感をもって無駄なく動けば、数億の費用をかけることなく半年で完成すると考えています。大阪・関西万博までに実現すれば、世界が驚きますよ。それができるのは、世界的に見てCRMのノウハウも熱意も高い当社だけだと自負しています。
── 「ウォール・ストリートジャーナル」で、日本を代表する次世代のリーダーとして紹介されました。
松原 海外ブランドを持たず、日本にしか拠点がない日本のオーナー社長が選出していただけるとは、奇跡的なことです。日本にはこんな企業がある、日本は価値ある国だということを世界に知ってほしいですね。
地方のベンチャーを活性化し日本経済の再起を目指す
── 将来のビジョンは。
松原 海外向けビジネスを行う中で、日本は魅力的な国だと感じます。食やアニメ、アーティスト、テクノロジーの分野でも優れた技術がたくさんあります。この良き文化、「おもてなし」精神が根づく思想を世界に発信したい。そのためには日本経済の活性化が欠かせません。特に世界の玄関口である関西の経済発展は重要です。「規模の経済」から「連結の経済」へと変化している今、関西ベンチャーが必要に応じて手を組みながらスピード感を持って成長できるようにサポートしていきます。
── 日本経済の活性化にはCRMが欠かせない。
松原 はい。CRMの特性は、「おもてなし精神」に通じるものがあります。つまり、世界中で日本人が最もCRMをうまく扱う素質を有しているはず。顧客との絆を築くことに長けた日本に、世界一のCRM市場を築きたいですね。
会社概要 創 業●2020年7月 資本金●1,980万円 本 社●大阪市淀川区 従業員数●35人 事業内容●自社プロダクトやサービスの提供、CRMのコンサルティング支援など https://www.arcuss-japan.com/ |