味の素は創業以来、食品だけではなく、アミノ酸技術を活用した多岐にわたる製品を展開している。医薬関連やヘルスケア製品、さらには半導体に用いられる絶縁材もその成果だ。
世界130以上の国と地域で事業展開する同社のASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value)は「社会課題解決と経済価値を生み出すことを両立し、『幸せの好循環』を目指している」と藤江太郎社長は述べる。「アミノサイエンス」で人・社会・地球のウェルビーイングに貢献するという志(パーパス)を掲げる味の素は、特に「ヘルスケア」「フード&ウェルネス」「ICT」「グリーン」という大きな成長が期待される4つの領域へ注力する。
そして、4つの領域での新たな価値創出のために従業員のエンゲージメント向上を何よりも重視している。グローバルな顧客基盤を活用し、独自の技術をさらなる社会価値につなげ、イノベーションを創出する人財を輩出すべく、志の醸成と共感、実行力を高めるマネジメントサイクルを標準化して組織的に推進している。味の素は1年に1度、従業員エンゲージメントを定量的に測定し、改善に向けPDCAサイクルを回してきた。従業員のエンゲージメント向上が経済価値を生み、それが従業員に還元されることで、さらにエンゲージメントを高め、企業価値向上に直結すると考える。
特に、志の実現に貢献していると実感する従業員を増やす「ASVの自分ごと化」を重視し、その実現を主体的に進める人財への投資の強化を図り、さらなる組織変革に取り組む。
(雑誌『経済界』2023年12月号「企業改革の実践者たち」特集より)