災害増加と電気代高騰で、太陽光発電への関心が高まる中、創業8年目の新日本エネックスが、太陽光パネル・蓄電池の施工で業績を急拡大させている。会社と社員、そして顧客を大切にする「三方よし」の経営がこれを支える。(雑誌『経済界』「半導体特需に沸く九州特集」2024年1月号より)
「エネリース」を武器に全国展開を加速
2009年の再生エネルギー固定価格買取制度によって、太陽光発電は「売電」という投資商品として設置が急増したが、19年以降、買取期間の終了と買取価格の引き下げで、投資商品としてのメリットがなくなりつつある。近年では、昼間発電した電気を蓄える家庭用の蓄電池が普及し、発電した電気が夜間や停電時にも使えるため自家消費の実用品としてのニーズが高まってきた。
「太陽光発電の投資ブームの時から将来の売電価格の下落と、自家消費のニーズが高まることを先読みし、販売戦略を練ってきました」と語るのは新日本エネックスの西口昌宏代表取締役。
その読み通り、自家消費向けの太陽光パネルと蓄電池のセット販売を業界でいち早く取り組んだ同社の業績は急拡大。20年1月期に10億円だった売上は、23年1月期は41億円、24年1月期は、56億円を目指し、年間の施工実績は2千件を超えている。
加えて、近年の災害増加と電気代の高騰が同社の太陽光パネルと蓄電池の関心が高まり、「停電時に太陽光発電のおかげでペースメーカーが維持できた」と顧客からも喜ばれ、電気代の引き上げ幅が大きい首都圏からの問い合わせも増えている。
「設置したお客さまからも好評な太陽光パネルと蓄電池のセット販売ですが、初期費用の高さから諦めるケースがあるのです。そこで当社は初期費用0円で設置でき、毎月定額の利用料を払うサブスク型の『エネリース』を企画・開発し、23年の4月から販売を開始しました。おかげさまで発売当初より『やっと太陽光発電を設置できる』『毎月利用料金が明確で安心』とお客さまからも好評です」と西口代表。
初期費用0円で、サブスク型ということで今まで二の足を踏んでいた顧客の設置が相次ぐ「エネリース」だが、そのメリットは初期費用0円ということだけではない。
「実は、新築住宅を建てる際に太陽光パネルと蓄電池を設置したくても住宅ローンに組み込むと枠を超える、いわゆるローンアウトになってしまうことで諦めているケースが多いのです。『エネリース』は、当社が10年または15年リースの形で提供するため住宅ローンの額に関係なく設置できる今までにないスキームです」と西口代表は自信を持つ。
標準的な戸建ての例では出力・容量ともほぼ5kwの太陽光パネル+蓄電池のセットを15年契約の「エネリース」で設置すれば、毎月利用料金は1万8150円。契約期間中のメンテナンス費用も全て含まれているため安心して利用できる。
「太陽光パネルと蓄電池を自家消費に使っていれば電気代削減分と売電収入でリース料金の大半をカバーでき、実質毎月のリース料金は限りなく安くなるという経済メリットも大きいのです」
また、契約終了時には設備の譲渡を無償で受けられることもメリットの一つ。ほとんどの太陽光パネルの出力の保証期間は25年であることから、10年契約で残り15年、15年契約で残り10年以上利用料金なしで利用できる。契約終了後もメーカー保証は継続されるので 電気代の削減と売電収入はそのままであることも大きなメリットだ。
同社は、次の飛躍に向けて今後の電気自動車の普及に伴い、市場の拡大が見込まれる住宅と電気自動車で電気を相互供給できる給電システム「V2H」にも注力する。
「『V2H』は太陽光発電からの給電も可能なため、電気代の高騰が続けば太陽光発電の需要もさらに高まるはずです」と、西口代表。
同社は、太陽光発電のリーディングカンパニーとして、自動車メーカーやディーラーとの提携に力を入れ、電気自動車市場に普及とともに拡大するV2H市場の獲得を目指していく。個人向けには電気代高騰対策として「太陽光パネル・蓄電池」を、法人向けには「V2H」を、2つの市場をターゲットに向け、「エネリース」を武器に九州から全国展開を加速する。
社員との対話を大切にし社員とともに上場を目指す
西口代表は、22歳で太陽光関連の販売会社に入社したが、売上最優先の姿勢に疑問を持ち、「社員を大切にする会社をつくりたい」と、30歳で新日本エネックスを起業。現在、東京、福岡本社、博多支店、島根、北九州、岡山、熊本、宮崎、鹿児島、他12の拠点を展開し、急成長を続ける。
「起業当初は採用に苦労しましたが、今は当社の事業に共感してくれる人を仲間として迎え入れています。そのためにも採用面接を大切にし、最後は1対1で相手の話をじっくりと聞き、お互いが分かり合えるまでとことん話をします。特に営業マンには『お客さまに寄り添い、お客さまの側に立った営業』を徹底しています。おかげさまで取引先の住宅メーカーから、業界一クレームの少ない会社と言われているのも自慢です」
「事業は、会社も社員も顧客の『三方よし』で当たり前。そんな会社であり続けたい」という西口代表は、来年以降の東証への上場準備も進め、さらなる飛躍を目指す。
会社概要 設立 2015年3月 資本金 5,000万円 売上高 41億1,145万円(23年1月期) 本社 福岡県福岡市博多区 従業員数 110人(23年10月現在) 事業内容 太陽光発電・蓄電池システムの販売・工事および保守。オール電化販売・工事および保守。リフォーム工事業。カーポート付き太陽光発電システム販売施工。EV、V2H事業 https://nj-enex.co.jp/ |