日本最大級の履歴書作成・キャリア管理サービスで120万人以上の登録会員を誇るYagish(ヤギッシュ)。履歴書を作成した会員と求人企業を結び付ける「1万円採用」という「ヤギオファー」サービスで業界にインパクトを与えている。(雑誌『経済界』2024年2月号「テック企業特集」より)
2カ月で500社以上が登録年内に2千社超える見込み
ヤギッシュの金相集社長は、東京工業大学にて研究者として活動した後、LINEの設計に携わり、ソーシャルメディアを活用した事業を展開してきた。
同社は2018年からブラウザ上で履歴書を無料作成できるサービス「ヤギッシュ」を提供。会員登録をしなくても作成でき、使いやすいシステムがクチコミで評判となり、利用者が自然と増えていった。なお、会員登録をした場合、履歴書をクラウド上に保存可能となる。現在の登録者数は115万人、年内には150万人を突破する見込みだ。
「ヤギッシュはパーソナルデータの研究開発のためにつくったもので、当初はビジネス目的ではありませんでした。しかしユーザーが思いのほか増え、会員に役立つ収益モデルを考えるようになりました」と金社長は話す。
これまで有料のコンビニプリントや企業への履歴書郵送代行で収益を上げてきた。加えて、23年9月にリリースしたダイレクトリクルーティングサービス「ヤギオファー」を、新たな収益モデルとしている。
「会員数は25年には300万人に増えると予想しています。会員に企業から直接スカウトを届けるのが『ヤギオファー』です。企業は月1万円の月額利用料(会費)で、月100通までオファー送信できます」
特に中小企業では、人材採用に多額のコストをかけても応募者数が少ないのが悩みだ。しかし、月額1万円で100万人以上の会員の中からアプローチできるとあって、2カ月で登録者数は500社を超えた。
「25年初には登録が2千社を超える見込みで、その反響に驚いています。当社でも新卒採用にヤギオファーを使ったところ、3万円の費用で6人の内定を獲得できました」
日本の中小企業数は約400万社あり、今後も登録社数の増加が見込まれている。
ミドル層へのスカウトで求職者の可能性も広がる
先述の通りヤギオファーは、新卒、中途、アルバイト・パート、副業の雇用区分ごとに月額利用料1万円となっており、オファー送信数100通、オファー承認者の個人情報閲覧10人、オファー承認者とのチャット10人という制限がある。1万円を追加課金することで、これらの制限が解放されるシステムだ。
「いきなり正社員として採用するより、副業として働いてもらうことでミスマッチを防ぎやすくなります。副業の求人も低コストで行えるのが魅力です」
一方、求職者は履歴書を登録するだけでオファーが来て、自身のキャリアに自信が持てるようになる。
「これまでスカウトというと、大企業でハイキャリアの人材が対象だと思われてきました。しかし、例えば営業やタクシー運転手といった職種の人をスカウトしたいという中小企業はたくさんあります。また登録会員は転職を考えていなくとも、副業として収入アップやキャリアアップできる可能性が広がります。企業にレスポンスをしたら100ポイント貯まって、外部ポイントに還元できる仕組みもあります」
ヤギッシュの登録者は人口分布に比例して全国におり、地域採用にも対応する。
「1万円で採用できたという成功事例が増えることで、ヤギオファーを利用したいという企業、求職者をどんどん増やしていきます」
韓国、台湾、シンガポール海外の若者たちを元気に
同社による採用の価格破壊は、同業他社への影響も必至だ。
「ヤギッシュが多額の広告費をかけずに会員100万人以上集めることができたので、企業は低コストでこの会員を活用できます。他社のビジネスモデルでは、会員を集めるコストがかさむため、月額利用料1万円は不可能だと思います」
25年にはアジアでのサービス展開を予定しており、IPOによる資金調達も準備中だ。
「ヤギッシュがグローバルに人材を雇用できる仕組みとなるよう多言語展開とローカライズサービスを進めています。今後、日本では少子化による人材不足の解消のためにも優秀な外国人の雇用が求められます。若者には自分のキャリア、自分の生き方をヤギッシュから発信し、グローバルマインドを持ち、エネルギッシュに生きるためのインフラにしてもらいたいと考えています」
会社概要 設 立 2021年9月 資 本 金 9,500万円(資本準備金含む) 売 上 高 1億5,000万円 本 社 東京都渋谷区 従業員数 15人 事業内容 履歴書/職務経歴書作成サービスの提供、人材紹介サービスの提供、求人サイトの運営 https://www.yagish.jp/ |