2023年は日本プロ野球史上59年振りの関西ダービーが繰り広げられ、盛り上がりを見せた関西。日本全体では海外情勢を含めた多くの課題に直面する中、万博を起点にさまざまな取り組みが行われている。関西経済の可能性や企業のあり方を伺った。(雑誌『経済界』2024年3月号「関西経済の底力特集」より)
日本全体で抱える社会課題に主体的にビジョンを示し行動を
── 現在、関西経済同友会として注力していることは。
角元 当会の本年度の事業計画に「健全な危機意識で未来のための行動を ~持続可能な経済・社会を関西から~」を掲げています。
今、わが国に山積する課題に、国民一人一人が自分事として捉え行動していく必要に迫られています。GDPの低迷はもちろん、足元の円安は国力低下を映すもの。その根源的な課題である少子化・人口減少は危機的状況です。人手不足はあらゆる業種で起きており、大きな課題です。
当会としては多様な委員会を設置し、数多くの活動を行っています。中でもカーボンニュートラル、少子化といった喫緊の社会課題の解決に向けた取り組みを強化しています。さらに「フロンティア探索懇談会」を新設。ベース地の中之島を飛び出し、うめきたのグランフロントで開催しています。夜、お酒を片手に気さくな雰囲気の中で、新たなテーマについて、会員と大学生や外部の方々と議論できるようにしました。テーマは「食と農」「感性」などです。世代を超えフィールドの異なる人たちとの交流から新たなアイデアが生まれるのではないかというチャレンジです。
── 現在の海外情勢をどのように見ていますか。
角元 インバウンドはコロナ前の9割に回復している感覚があります。今は円安も追い風となり好調ですが、中長期視点で、高付加価値な観光商品・サービスの再構築が求められます。円安傾向は輸出企業にとってプラスであるものの、輸入物価上昇となり、個人消費は冷え込むでしょう。心配なのは世界紛争です。長期化や拡大により食料やエネルギー価格が不安定になるなど生活に影響を与えます。そこで再生可能エネルギーへの転換に投資を強化すべきです。
私は長らく銀行にいますが、先を見通しにくい時代になったと感じます。かつての長い米ソ対立の中でさえ、世界はある意味で安定していました。その後、各国がグローバルにつながる中で海に囲まれた日本は平和ですが、世界では新たな対立が生まれており、日本も無関係では済まされません。日本はエネルギーや食料を海外に頼りながら自国をどう守り、諸外国とどう付き合っていくのかが問われています。
企業・地域・人が共創する社会。潜在力を生かし関西経済に貢献
── 2024年の関西地域の動向は。
角元 大阪・関西万博の準備は着実に進んでいます。今後はコンテンツの充実や機運醸成のフェーズとなります。出展する150の国と地域の人々が事前準備で大阪を訪れることも、関西を活性化する力となります。
万博を契機に人が集まることから、当会は広域観光推進委員会を設置し、船で大阪湾や瀬戸内海を結ぶことを検討しています。特定地域への観光客の集中を分散し、阪神港を中心にした広域観光を実現するものです。万博後の27年にはワールドマスターズゲームズ関西大会が控えています。世界中の人々が集まる機会を前に、西日本の魅力発信と活性化のインフラ整備に力を入れています。
24年9月には、大阪駅前のうめきた2期地区開発プロジェクトとして4万5千㎡の大規模緑地を擁する「グラングリーン大阪」が先行オープンします。緑化のアイデアは08年に当会が提言しました。産学連携の場も持つうめきたが関西経済の発展に向けたイノベーションの起点となることを期待しています。
── 豊かな社会創りに向けて、関西企業への期待は。
角元 企業の存続には、自社利益のみを追求する経営でなく、地域社会への貢献が必要です。大手企業を中心に、SDGsの17の目標等に対し、さまざまな取り組みを進めています。この流れを拡大するためにサプライチェーンのつながりを通じて、取引先企業と目線の高さを揃えることが極めて大事です。
大企業への期待として、豊富な人材を他社にも副業等でシェアすれば、中小企業の人手不足にも貢献できるかもしれません。一方、中堅・中小企業の強みとして、オーナー企業が多いことから、決断の速さが挙げられます。先の見えない時代において、しなやかに変化していくことは、大きなアドバンテージになります。
関西には、大学が多く集まっており、ディープテックが集積しているものの、社会に実装しきれていないのが現状です。そこにも人材の課題があります。アイデアはあっても、ビジネス転換を支える経営人材が不足しています。シニア層の活躍の場を増やすのもその一つの可能性です。
関西が持つ潜在力を生かし、一人一人が次世代に豊かな社会を創り上げていく、その実践に寄与していきたいと考えています。