経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

利用者の満足度を最大化する総合福祉企業を目指す 依田 雅 ケア21

ケア21 依田雅_1

訪問介護からスタートし、現在は総合福祉事業を手掛けるケア21。順調に売り上げを伸ばし成長してきた。その強みは利用者と従業員が密に接する現場にある。現場第一主義を貫き、「介護の現場にはパワーがある」と依田社長は話す。(雑誌『経済界』2024年3月号「関西経済の底力特集」より)

ケア21 依田雅_1
ケア21 依田雅

従業員のパワーに投資現場第一主義で利用者満足を

 訪問介護と施設介護を中心に、福祉事業を幅広く展開するケア21。コロナ禍でデイサービスの休業や施設への入居ペースは鈍化したものの、落ち込みの少なかった訪問介護など他事業が増収を支えた。コロナが5類感染症に移行した2023年5月以降、施設系事業にようやく回復の兆しが見えてきた。

 「今からが本番という気持ちです」と話す依田氏は20年に父親から事業のバトンを受け継ぎ社長に就任。コロナ禍は現場のオペレーション対策に追われながらも、未来に目を向け、社内インフラ構築の手を緩めなかった。

 重点的に取り組んできたのは、介護職員である従業員とDXへの投資だ。介護業界は人件費割合が大きい。利用者に満足してもらい、選ばれ続けるためには従業員がキーになる。経営理念の一つ「現場第一主義」の通り、利用者を最もよく知る介護職員の声に耳を傾けることを重視し、現場のオペレーション改善やサービス向上に努めている。懇親の場では従業員が依田社長を囲み、意見や要望を伝えるという活発なコミュニケーションを取っている。

 大規模なシステム開発にも現場第一主義が表れている。管理運営を効率化するシステムや教育研修システムなどは、全て独自のカスタムソフトウエアで成り立っており、現場のサービスオペレーションに適した仕様になっている。

 従業員の教育研修には特に力を入れている。同社には毎月100人近くの社員が入社するが、未経験でも専門知識や技能を習得できるよう、多種多様な講座やフォロー制度を備えている。とりわけ介護技術の向上のために、チャレンジキャリア制度を導入し、実技評価を含む15段階の評価報酬制度を設けている。

 特徴的なのは、画一的なキャリアアップを前提にしていないことだ。介護職員の中には管理職を目指したい人もいれば、利用者に質の高いサービスを提供しながら寄り添い続けたいという人もいる。いずれのニーズにも活躍できる場を提供し、従業員の意向を尊重している。

 一般的に介護業界の仕事には厳しいイメージがある。同社では、「介護職として働くのは、誰かの役に立つことに喜びを感じ、成績や目標達成よりも楽しさややりがいをモチベーションに仕事をする人が多い」と捉えている。この傾向から現場での施策が多く実施されている。

 例えば「ありがとうほめカード」の取り組みは、職場のメンバーを褒めることを推奨している。仲間に目を向け、認める意識がチームワークをより円滑にする。他にも「笑い笑かす文化」もある。介護の仕事をしたい人は、どの会社に勤めるかよりも職場が面白いと感じるかどうかを大事に考えるという。前向きな雰囲気づくりを会社全体で行っている。心理的安全を確保し、一人一人が主体性を発揮しながら働き続けてもらえる環境づくりに力を入れる。

 依田社長は、従業員のやる気が企業の成長に生きてくるはずだと語る。 「福祉事業に携わって感じたのは、働く人に大きなパワーがあるということ。お役に立ちたい想いが機動力となり、事業を拡大させていくことでしょう」

 現場の力を集約し、企業を成長させ、ビジョンを実現させていくのは経営者の役割だ。

 「彼女(彼)たちのパワーを邪魔しないように意識しています。従業員が『みんなの会社』と言える、ボトムアップ型の会社を目指しています」

国内の市場縮小は必至。海外も視野に100年企業に

ケア21 依田雅
ケア21 依田雅

 同社は介護事業の前は学習塾を展開していたが、依田社長は少子化による市場縮小を肌で感じていた。

 この先、高齢者人口も減少する。市場縮小局面を見越した2代目のチャレンジは海外進出だった。実習生を受け入れた縁から、20年にベトナムに日本語学校を設立。現在は25年の介護施設開設に向けて準備を進めている。そこには、ベトナム人実習生の帰国後に働く場所をつくりたい想い、また将来の世界高齢化に先手を打ちたい狙いがある。

 「メード・イン・ジャパンの品質は海外から高い評価を得ています。日本の介護サービスもきっと求められるはずです」

 コロナ禍では、「この先5年を走るためのレールは敷けた」という依田社長。介護事業にとどまらず、ケアを必要とするあらゆる利用者にプラスアルファの満足を感じてもらえる総合福祉企業を目指している。

 福祉サービスのニーズは多様だ。主力の訪問介護や有料介護施設などの介護事業をはじめ、福祉用具レンタルや住宅改修、障がい福祉、児童福祉など、幅広く展開する周辺事業に、これまで以上に力を入れていく。

 一貫して福祉領域に特化したビジネスで、地域のオンリーワンとなるべく成長を続けてきた。現場を第一に、従業員と培ってきたノウハウ、そして想いを起点に未来を創造し、変化に適応しながら「100年続くいい会社」の実現を図る。 

会社概要
設  立 1993年11月
資 本 金 1億円
売 上 高 410億円
本  社 大阪市北区
従業員数 8,600人(グループ全体)
事業内容 在宅系、施設系介護等総合福祉事業
https://www.care21.co.jp/