北海道に本拠地を移転した20周年の節目の年に、北広島市に新球場を中心としたボールパークを開設した北海道日本ハムファイターズ。野球やエンターテインメントの場となり、初年度から大盛況。球団創設50周年の2024年には、さらなる飛躍を目指す。(雑誌『経済界』「攻勢に転じる北海道特集」2024年4月号より)
来場者数300万人の目標を達成したボールパーク元年
「北海道ボールパークFビレッジ」(以下、Fビレッジ)元年となった2023年。国内初となる開閉式屋根を備えた天然芝球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」を中心に、ショップや飲食店、アスレチックやグランピングの施設、農業体験施設などを整備したFビレッジは、開場から約半年で目標としていた来場者数300万人を達成した。
2023年3月から北海道日本ハムファイターズの社長として球団運営の指揮を執る小村勝氏は、同時にFビレッジ全体の事業運営を行うファイターズ スポーツ&エンターテイメント(FSE)の社長も兼務。FSEは野球興行、新球場運営はじめFビレッジの事業をマネジメントする。「20~30代の若い方々や、野球に興味がない方にも多くお越しいただき、目標以上の成果です」と手応えを感じている。
新球場にはホテルや温浴・サウナ施設を併設し、多ジャンルの飲食店も揃えた。また、球場内での決済は完全キャッシュレス化した。
「開場当初は交通や飲食店の混雑、キャッシュレス決済での混乱などさまざまな問題が起こりましたが、その中で1年目は今後のために挑戦しようと目標を掲げました」
問題解決に有効だったのがSNSによる情報発信で、特にX(旧ツイッター)上に〝公式目安箱〟として立ち上げた「Fビレッジおじさん」アカウントはユニークな取り組みとなった。不満や改善要望をハッシュタグで集め、すぐに対応できる問題は各部門に伝え、スピード感をもって解決。時間がかかるものは球団の方針を知らせた。ゲストの声を真摯に聞く姿勢を示すとともに、今後のサービス向上につながる貴重な意見を集めることもできた。
オフシーズンにも、スタジアムツアーやグルメ・買い物を楽しむ人など、休日はもちろん平日にも客足が絶えなかった。冬季にはスキー体験ができるスノーパークをオープンするなど、観光地として認知が広がった。
「日本国内はもちろん、韓国や台湾など、野球人気が高い国は多い。野球を入り口に、北海道観光の選択肢の一つになれれば」と小村社長は意気込みを話す。
共同創造空間として地域を活性化する連携を
新球場では食品会社の一員である強みも生かし、親会社である日本ハムグループ運営のフードコートを設けた。主力商品「シャウエッセンR」を使用した特製ホットドッグは連日行列となるほどの人気だ。オフシーズンにはキッチンカーで全国8カ所を巡り、各地でも好評となった。
「工場や物流センターなど、日本ハムグループの設備の約2割がこの北海道にあります。野球でご縁が生まれる以前から、当グループにとって北海道は大切な地です」と小村社長。今後も、「北海道」「食」「スポーツ」をリンクさせた取り組みを進めていくつもりだという。
Fビレッジはその名の通り、ボールパークを起点とした持続可能なまちづくりが構想の原点にある。北広島市はもちろん、道内自治体や企業・団体、市民とのさまざまな連携を重視しており、今後も多くの分野で取り組みを進めていく予定だ。
「ボールパークのコンセプトは、皆さんとつくる『共同創造空間』です。今が完成ではなく、まだ進化の途中。日本ハムグループだけでなく、たくさんの方の力を借りて街全体、北海道全体が盛り上がるようにしていきたい」と小村社長は力を込める。
24年は球団にとって一つの節目となる、創設50周年の年だ。特設サイトでは、初代オーナー大社義規氏の想いなどを紹介。シリーズ期間中は、いろいろな企画を行っていく予定だ。
「その際は、前シーズン培ったノウハウを生かし、レベルアップしたサービスでお客さまをお迎えしたいと思います。ただし、われわれの1丁目1番地は野球。魅力的な試合と勝利の喜びを届けることが、プロ野球チームが一番にするべきことですから、チーム強化の取り組みに、一番力を入れたいと思います」
会社概要 設立 2003年8月 資本金 2億円 本社 北海道北広島市 事業内容 プロ野球球団運営 https://www.fighters.co.jp/ |