(雑誌『経済界』総力特集「注目企業2024」2024年5月号より)
国内酒類市場は一向に回復の兆しが見えない。当然、酒類メーカーの業績は厳しい、はずだ。
ところが先日発表されたビール大手4社の2023年12月期決算は、揃って増収増益だった。とりわけサントリーホールディングスの売上高(酒税込み)は10・6%増と4社の中で最大の伸びを示した。
好調さの理由の一つはビールカテゴリーが31%増と大きく伸びたこと。ビール類の市場は縮小を続けているが、サントリーは昨年発売した「サントリー生ビール」が計画の1・3倍、主力の「ザ・プレミアム・モルツ」が9%増を記録した。もう一つは海外事業。22年12月期決算で初めて海外売り上げが国内を逆転したが、前12月期はその差がさらに開いた。
その結果、サントリーHDの売上高は、日本の食品業界で初めて3兆円を突破した。そしてこの勢いは今後さらに加速しそうだ。
2月16日に開いた決算会見で、新浪剛史社長は「24年12月期の売上高が3兆4500億円(酒税込み)になる」との見通しを示した上で「2030年に売上高4兆円を目指す」と宣言した。
さらには「RTDカテゴリーで2030年に世界ナンバーワンを目指す」という。RTDとは酎ハイやハイボールなどの缶製品を指す。「米国で勝てないと目標は達成できない」(新浪社長)ため、日本で人気の酎ハイブランド「︱196」での米国の発売エリアを拡大するほか、英国、ドイツでも販売を開始し、30年には世界で30億ドルを販売する計画だ。サントリーの進軍ラッパは鳴り続く。