経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

地球沸騰化を食い止めろ!大阪万博で見られる環境技術の競演

西原麻友子 ベホマル

2025年の大阪・関西万博には、環境技術が集結する。大阪ガスのCO2リサイクル技術やベホマルの「DACプラ」など、温室効果ガス削減の革新技術が紹介される。企業と個人が協力し、持続可能な社会の実現に向けた具体的なアクションを模索し、地球の未来を守るための重要な場となる。文=佐藤元樹(雑誌『経済界』2024年11月号より)

異常気象に待ったなし 大阪ガスのCO2リサイクル

 地球温暖化が進み、世界各地で異常気象が増加している。日本でも記録的な暑さが続き、「地球沸騰化」という表現が使われ始めた。これを受け、温室効果ガス削減のために2005年の京都議定書や15年のパリ協定が導入され、気温上昇を2℃未満に抑える目標が掲げられている。日本は30年までに13年度比で46%の削減、50年のカーボンニュートラル達成を目指している。

 25年に開催される大阪・関西万博では、環境問題の解決策を集めるための「EXPO2025グリーンビジョン」を掲げる。日本博覧会協会の主導で、政府や企業など多様な関係者が協力し、持続可能な技術や取り組みを世界に発信し、地球規模の課題解決に貢献することを目指している。

 大阪ガスもこのグリーンビジョンの実現に向けて取り組んでいる企業の一つだ。

 同社は、温室効果ガスの排出削減に貢献するメタネーション技術の開発を進めている。この技術は、風力や太陽光エネルギーを用いて、水を電気分解して水素を生成し、そこにバイオガスから抽出したCO2を使って合成メタン(e-メタン)を製造する。製造されたe-メタンは都市ガスの代替として利用することで、温室効果ガスの排出を大幅に削減できる。これにより、大阪ガスは30年度までに既存のインフラに対してe-メタン1%を導入し、国内サプライチェーンにおいて500万トンのCO2削減、50年のカーボンニュートラルの実現を目指すという。

 24年5月、大阪市此花区のごみ焼却場に実証施設「舞洲工場」を完成させ、生ごみから生成したバイオガス(メタンとCO2)を利用してe-メタンを製造するプロジェクトを開始した。

 舞洲工場では、24年7月まで実証実験が行われたが、8月から12月にかけて万博会場内に工場を移設し、25年4月から本格的にe-メタンの製造実証を開始する予定である。万博会場内で発生する生ごみを回収し、これを原料としてe-メタンを製造し、迎賓館の厨房や熱供給施設での使用を通じて、ゼロエミッションを目指す。e-メタンの製造能力は1日当たり一般家庭170戸分に相当するエネルギー供給が可能であり、この技術により会場内でのCO2のリサイクルが促進される。e-メタンを用いることで、再生可能エネルギーを活用しながらカーボンニュートラルなエネルギー源としての利用が期待されている(下図参照)。

 さらに大阪ガスは、一般社団法人日本ガス協会のガスパビリオン「おばけワンダーランド」の建設にも参加している。パビリオンの外観には大阪ガスが開発した新素材「SPACECOOL」が使用されており、太陽光を反射し直射日光による熱の吸収を防ぐとともに、放射冷却技術で外気温よりも約10℃低い環境を実現する。この効果は、猛暑の中で作業を行うスタッフの熱中症リスクを低減するだけでなく、パビリオンのエネルギー効率を高めることにもつながる。

スタートアップも参加 身近なものでCO2を吸収

ベホマルが開発するバイオマスCO2吸収材料
ベホマルが開発するバイオマスCO2吸収材料

 万博内にある大阪ヘルスケアパビリオンでは、開催期間中にさまざまな企業や団体が週替わりで技術や製品を紹介するプログラムを実施することになっている。

 2025年4月21〜28日には、りそな銀行が主催する「Resona Mirai Color 夏」の一環として、滋賀県のスタートアップ、ベホマルが参加する。同社は、CO2を吸収するバイオマス素材「DACプラ」を利用した取り組みを、流体機器製造販売を行うIBS(大阪府吹田市)と共同で展示を行う予定で、バイオマス燃料電池と「DACプラ」によるCO2吸収技術を組み合わせた循環型エネルギーシステムを展示する予定だ。

 ベホマルの西原麻友子社長は、「環境問題は長期的な視点が必要なため、国内においては優先されにくい。それでも、誰でも手軽に環境改善に貢献できることを広め、人々の行動変容を促し次世代により良い地球をつないでいくことが大切だ」と語る。ベホマルの社名は、有名ゲームの回復呪文に由来し、マル(地球、人の輪)に回復呪文をかけるという想いが込められている。

西原麻友子 ベホマル
西原麻友子 ベホマル

 なお、ヘルスケアパビリオンには万博期間中、他にも多くのスタートアップが参加し、それぞれが持つ先進的な技術やアイデアが紹介されている。

 今回の万博出展を通じて、多くの人々にこの星が今抱えている環境問題に触れてもらい、その人たちの行動変容によって将来の地球環境が回復することを理念に掲げている。

 ベホマルでは大阪・関西万博は、地球規模の環境問題に対する解決策を発信する重要な場となる。本稿で紹介した事例はほんの一部で、会期中はこれ以外にもさまざまな技術が紹介され、持続可能な未来に向けた実証実験や新素材の展示などが行われる。

 これらの取り組みは、企業や個人が環境保護に貢献できる道を示し、地球沸騰化の課題解決に向けた具体的なアクションのモデルとなることを目指している。