組織の要は優れた人材　ブランディングで採用力をアップ　平出浩太郎　エーエスエル

オープン系開発をメインに、サーバ・ネットワーク構築や先端技術を使用した提案などを行うエーエスエル。社員を増やし、業績を伸ばし続けてきた背景には、エンジニアファーストの姿勢と福利厚生、ＩＴ系らしからぬブランディング戦略があった。（雑誌『経済界』2024年12月号「総力特集 強い組織の流儀」より）

スタイリッシュなオフィスに社員専用レストランも

エスアイアンドシーを親会社に持ち、金融、通信、官公庁といった顧客のシステムを開発するエーエスエル。依頼があれば受託開発も行っており、最新技術へも積極的にチャレンジしてきた。

平出浩太郎代表は新卒でエスアイアンドシーにエンジニアとして入社し、子会社化されたエーエスエル常務取締役を経て、代表となった。

「もともと赤字だった会社をリブランディングするのに２年かかりました。エンジニア不足の中、当社を選んで入社してもらうためにはどうすればいいのか、試行錯誤しながら企業イメージを高める改革を大胆に進めてきたのです」

そのブランディングの一つがスタイリッシュなオフィスづくりだ。まるで美容院やブティックのような雰囲気で、平出代表自らもインテリアを演出したという。

「オフィスをイメージチェンジしたことで応募者が１・２倍に増えました。エンジニアは顧客先での常駐勤務がメインなので本社で働くわけではありませんが、オフィスのおしゃれな雰囲気は会社のイメージアップになっているのでしょう」

さらに同社は社員専用レストラン＆バー「Ａｓｓｅｍｂｌｅｒ」を赤坂見附に開店している。お店には専属のシェフがおり、社員は原価並みの料金でおいしい料理を食べられる。社員同士のコミュニケーションの場としてはもちろん、エンジニアが常駐先の顧客を招待することもでき、営業の接待にも使われている。

「当社はエンジニアファーストを打ち出しています。レストランをオープンしたことで、社員に利益還元していることを社内外の人に理解してもらいやすくなりました」　

また、会社のウェブサイトや名刺のデザインを軟らかくするなどして、女性エンジニアを増やすことにも力を入れている。

「設立当時、社員は全員男性でしたが、今は２割が女性です。ウェブサイトはオレンジ色をベースにイラストを使い、会社のロゴも丸みを帯びたデザインにしています。私自身、もともとデザインが好きで、主導して作ることができました」

エンジニアの不満を吸い上げ離職率を下げる

同社では、担当営業が常駐しているエンジニアを訪問し、ランチミーティングをする機会を設けている。その際、ちょっと高めのランチ代を支給し、おいしいものを食べながら話しやすい雰囲気づくりを重視している。

「エンジニアに常駐先での悩みや不満を気軽に話してもらうことで、現況を把握し、不満が大きい場合は常駐先の変更も行います。細やかなコミュニケーションを取ることで、離職防止に役立てています」

平出代表はエンジニア出身であることから、エンジニアの気持ちがよく分かるという。

「昔は大変なプロジェクトの火消しの一員としてアサインされる仕事も多かったのですが、今はそういったことはありません。社員のひと月の残業時間は平均15時間程度です。エンジニアのキャリアと希望を尊重して、個性を生かせるところに常駐してもらい、ワークライフバランスも大切にしています」

細かい指示はせず、全社会議への出席も任意だ。主体的に動いてもらい、意見が出しやすい環境づくりを心掛けている。

「自分で考えて自分で解決する力を持つ社員を増やすことが、組織の成長につながると考えています。研修も強要せず、学びたい人は法人契約しているＵｄｅｍｙで自由にスキルアップできる仕組みです」

リファラル採用が多くエンジニアの希望を尊重

強い組織をつくるためには人材が要と考えている平出代表。応募者の能力を見極め、周りと和やかなコミュニケーションが取れる人を採用している。新卒採用は行わず、経験とスキルがある中途採用のみ行っており、エンジニアの高い質には顧客からも定評があるという。

「親会社との人材の行き来はないので、組織がガラリと変わってしまうことがないのも強みです」

リファラル採用が既に90人以上と多いのも特徴だ。縁故で採用に至った場合、紹介者である社員には報奨金が出る。

「社員が働きやすさを実感し、会社に自信を持ってくれているからこそ、知り合いを誘うことができるのでしょう」

ブランディングとエンジニアファーストの姿勢で、社員数も売り上げも右肩上がりを続けている。

「設立９年で社員数は10倍になりました。中長期的には現在の倍である１千人まで社員を増やしたいと考えています。オフィス移転も予定し、成長を続けていきます」