(雑誌『経済界』2025年2月号より「第49回経済界大賞」ベンチャー経営者賞受賞)
ベンチャー経営者賞 髙原幸一郎 NearMe社長
2024年4月、「日本版ライドシェア」が解禁された。一般ドライバーが自家用車を使い、有償で乗客を運ぶサービスのことで、タクシー不足の解消が期待される。
そんな日本版ライドシェアとは異なる方法で移動の課題解決に立ち向かうのが、17年創業のNearMe(ニアミー)だ。空港送迎シャトルサービス「エアポートシャトル」をはじめ、タクシーのシェア乗りサービス「NearMe」を運営する。複数組の乗客を同時に輸送するため、通常のタクシーより安い運賃を実現。エアポートシャトルの利用者数は、24年10月時点で延べ90万人を超えた。
髙原幸一郎社長は、12年から楽天で物流事業の立ち上げに従事。特に頭を悩ませたのが、最終拠点から配達先までの「ラストワンマイル」の効率化だった。再配達にかかるコストや人手不足などの解決に奮闘する中、今構築している仕組みを物流業界以外でも生かせるのではと考えたという。
「タクシーのシェア乗り」という発想を得たのは、終電後の駅でタクシーを待つ人々が行列をつくるのを見た時のことだ。「どうせみんな同じ方向の住宅地に向かうのに、1台に1組しか乗せないのはもったいない」と感じたことがきっかけとなった。
楽天ではその後日用品EC事業に携わり、商品を倉庫から発送するのでなく、配達先近くのスーパーなどの在庫とマッチングさせる仕組みを考案した。また米、仏でグループ会社の代表を務めた際、現地で車社会の非効率さを実感。現在の事業につながるヒントを拾い集めてきた。
「海外の現状も見た上で、改めて日本の地域社会の課題に向き合いたいと思い直し、起業を決めました」
日本版ライドシェア解禁で、「新たな移動手段」への認知が広がったことも追い風となった。
「日本版ライドシェアは、人手不足などの課題をドライバーの『量』を増やすことで解決する。対してニアミーは、既存車両を有効活用し、1台あたりの乗客を増やす『質』的アプローチです。この両輪で移動の課題を解決するため、われわれのサービスの認知ももっと広げていきたいです」