steer(ステアー)は街づくりを支える企業に特化し、転職支援サービスを手掛ける。デベロッパーやインフラ企業向けにミドル・ハイクラスの最適人材をマッチングし、転職後のアフターケアにも強みを持つ。今後は地方の街づくり企業に向け、次世代の経営幹部候補を紹介し地方創生をバックアップする。(雑誌『経済界』2025年9月号より)
佐藤広大 steerのプロフィール

さとう こうだい
街をつくる企業に向けてミドル・ハイクラス人材を紹介
東北出身の佐藤広大代表がsteerを立ち上げたのは2022年。大学時代からインターネット関連の代理店を始めるなど旺盛な起業精神の持ち主だった。しかし、11年に発生した東日本大震災で価値観が変わった。「私も仙台で被災したのですが、事業の根本は『人を守りたい』『人を豊かにしたい』であることにあらためて気付かされました」。大学卒業後はいくつかのキャリアを経て転職エージェントに就職。そこで任されたのが「街づくり」を担う不動産業や建設業向け人材の転職支援だ。
「不動産業のデベロッパーや電力・ガスを担うインフラ企業、建設するゼネコン、そして自治体が協力して一つの街をつくり上げていく姿は日本の産業の根幹であり、それらを支えているのは『人』にほかなりません。街づくりを支える企業を『人』を通じて支え、もっとこの業界を照らし出したいという思いが強くなり、独立しました。転職エージェントではありますが、ただの人材マッチング会社になり切るつもりはありません。自分たちが関わった転職支援が間接的に街づくりのプロジェクトを支え、『自分たちも街づくりに関わっている』という達成感が社員のモチベーションにもなっています」
同社が転職支援する対象者は年収800万~2千万円のミドル・ハイクラス人材だ。クライアントには財閥系不動産デベロッパーや日本を代表する電力会社、重厚長大など大手企業やそのグループ会社など約300社が名を連ねる。年齢のボリュームゾーンは30~40代を中心とした会社の将来を担う幹部候補で、数多くのマッチングを実現させている。
「クライアントが求める求人リクエストは技術者を中心にDXやGX、あるいは組織変革を主導できるプロジェクトマネージャーなど専門性が求められ、採用難易度が高いポジションが多いのですが、当社は確実に結果にコミットすることで信頼を高めてきました。例えば電力会社であれば、今最もニーズがあるのは省エネルギーの推進や太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーのプロジェクトを任せられるGX人材です。プロジェクト単位のアサインもあり、大きいものでは数千億円規模で全体竣工までは5~10年ほどかかりますが、皆さん社会貢献意識が高く、『子どもたちの未来のため、脱炭素に関わる仕事でスキルを生かしたい』『残りの人生をこのプロジェクトにかけたい』と言ってくれる人もいるほどで、必ず活躍できると確信して人材を紹介しています」
手厚い転職後のアフターケア クチコミによる好循環も
一方で企業側にもキャリア採用を積極的に受け入れる文化が求められる。一部「新卒プロパー文化」が根強く残っている企業もあるが、同社は転職後のフォローも欠かさない。
「組織改編を目的としてキャリア採用を始めたのに『新卒プロパー文化』の弊害からアレルギーを起こす企業もないわけではありません。しかし、組織には多様性が求められますし、人手不足の中でキャリア採用なしでは企業は続きません。当社は『転職させて終わり』ではなく、アフターケアにも万全を期して相談に乗っており、転職後の離職者はほぼゼロです。転職者のクチコミも幸いし、『どの転職エージェント使ったの?』などと話題になり、人が人を呼ぶ営業の好循環が発生しています。ウェブ上でも『街づくり・転職』『都市開発・転職』などで検索すれば当社はヒットしやすく、街づくりを仕事にしたい方々の登録が増え、紹介できる人材が拡大しています」
同社は社員規模30人程度ながら設立以来業績は毎年200%超の成長を遂げ、今年は東京駅前の「丸ビル」(丸の内ビルディング)の28階に移転。名古屋、大阪、福岡に支店を持つなど気鋭のスタートアップとして急成長を遂げている。
「日本の中心、街づくりの中心とも言えるこの丸の内にオフィスを構える信頼力と影響力は大きいです。オフィス所在地のブランド効果は軽視できません。目下の業績は順調ではありますが、当社の規模では全てにコミットすることができず社員数の問題で100%向き合い切れない案件もあります。毎年15人程度を採用し、3年後には60人超の社員規模にするつもりです。設立3年目ですが離職者はほとんどおらず、顧客満足度と従業員満足度も高い水準を維持しています」
東日本大震災を経験した佐藤代表は復興への思いも強く、同社はプロバスケットボールチームの「福島ファイヤーボンズ」とオフィシャルパートナー契約を締結した。
事業においては地方向けに次世代経営・幹部候補をマッチングさせる「エリアクリエイション事業」を拡大。これまでは正社員としての紹介を対象としてきたがコンサルタントや顧問、アドバイザーなどの形で業務委託契約にも幅を広げた「スキルシェア事業」で地方活性化を後押しする考えだ。
「地方の担い手が求められる中でこれまでIターンやUターンなども含めた転職支援も進めてきましたが、正社員ですとどうしても報酬などの条件が折り合わなかったり、高給で外から呼ぶことに拒否反応があったりします。ならば正社員で採用できなくとも、プロジェクト単位やスポットでプロ人材を紹介しようと『スキルシェア事業』を始めました。震災の被災地をはじめ、地方創生の一助になることを願っています」
| 会社概要 設立●2022年12月 資本金●1,000万円 本社●東京都千代田区 従業員数●30人 事業内容●エージェント事業、エリアクリエイション事業、HRソリューション事業 https://steer-co.com/ |

