ゲストは、会議を通してコミュニケーションの壁を取り払う「ギャル式ブレスト」を提供するバブリーさん。「高校時代に家出をした時、ギャルの強さやポジティブさに救われました。ギャルマインドで世の中のバイブスをアゲていきたい」と話します。ギャルと向き合う真剣さを感じる対談となりました。聞き手&似顔絵=佐藤有美、構成=大澤義幸 photo=西畑孝則(雑誌『経済界』2025年9月号より)
バブリー(竹野理香子) 合同会社CGOドットコム総長のプロフィール
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バブリー(たけの・りかこ) 1996年、山梨県生まれ。高校中退後、大阪でギャルカルチャーに触れ、大学在学中の2020年「ギャル式ブレスト」事業を立ち上げる。22年、合同会社CGOドットコム設立。「バブリー」は本名「竹(バンブー)」と「理香子」に由来。
めっちゃ苦しかった高校時代 ギャルとの出会いが転機に
佐藤 今日はギャル社長にお会いできるのを楽しみに……って、理香子さん全然ギャルじゃない!
バブリー ヤバい。「りかこさん」呼び、照れます(笑)。私はもうギャルは卒業しました。
佐藤 ではギャル時代、またギャルに興味を持ったのはいつ頃ですか。
バブリー 私は小中学校では生徒会長を務めたり成績もオール5でしたが、一方で先生や親の目を気にしながら生きていました。それで高校入学初日に、先生から「お前ら東大に行け!」とドラマのようなセリフを吐かれ、なぜ東大に行くのか、なぜ大学に行くのかが分からなくなり、不登校になってしまったんです。
佐藤 多感な思春期は親や学校の支配下にある自分の存在に疑問を感じますよね。つらかったでしょう。
バブリー めっちゃ苦しかったです。親とはケンカばかりで友達にも相談できず、自宅にこもる生活が3カ月続きました。それで高2の時に家出をして大阪・築港に行き、ギャルコミュニティと出会いました。
佐藤 初めて出会ったギャルの印象はいかがでした。
バブリー 皆自分の軸を持っていて、強くて、ポジティブで、直感的で、良い悪いがはっきりしていて、とにかくカッコよかったですね。自分の生き方とのギャップを感じ、カルチャーショックを受けました。
佐藤 東京・渋谷のギャルだったら、また違う影響を受けたでしょうね。
バブリー 大阪の方がギャルマインドは強かっただろうと思います。大阪には1年半いて、私自身、自己表現できるようになったのは大きな変化です。金髪にしたのもミニスカを履いたのも初めてで、自分で決められるのが楽しかったですね。
佐藤 そこでインスピレーションを得て起業するわけですが、ギャルマインドを事業化した理由は。
バブリー 2020年頃に「ギャルはオワコン」と言われていて、「オワコンじゃないし!」と思ったんですね。ギャルのファッションは時代とともに衰退しても精神性は残ります。日本社会はそれを見習うべきと考えたのが大学3年の頃。それで起業しましたが、私は起業家タイプではないので、好きなことを世の中に発信したい気持ちが強かったですね。
ギャルマインドを社会に広げ 意思決定者の多様化を目指す
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佐藤 事業展開されている「ギャル式ブレスト」とはどんなものですか。
バブリー 日本の会社の会議は皆がそれぞれのレイヤーに縛られていて、部長は部長として振る舞い、若手は発言に不安を抱えており、それが悪く作用しているケースを多々見かけます。そこで多様な意見を取り入れて空気から変えるのが「ギャル式ブレスト」です。肩書ではなくニックネームで呼び合う、敬語禁止・ため口で、他の人の意見を否定しないというルールがあります。1テーブルを参加者8人程度で囲み、ギャルが2人、進行役が1人付きます。
佐藤 大企業の導入が多いとか。
バブリー 最近では某自動車メーカーの方たちと一緒に組織を変えていく、若手社員が意見を出しやすくする会議(研修)を半年かけて行いました。若手はやりたいことを初めて言語化でき、上司も部下の意見を知れて、良いコミュニケーションが取れたとの評価を頂きました。会議後は反省会も必ず行います。私たちだけでなくクライアントを交えたりして、サービスの質を担保し、クライアントにも学びを深めてもらうために。また社内の模擬ブレストでは、抽象的な言葉を具体的にするなどの訓練をして人材を育てています。
佐藤 コミュニケーション系は競合の多い業界ですが、バブリーさんたちの会社が差別化できる強みは。
バブリー 空気を一変できるところですね。カルチャーの異なるギャルが同じテーブルに入ることで、参加者は頭や言語の使い方も変わりますし。会場にはミラーボールを置くなどして非日常を演出しています。
佐藤 ギャルにとっても学びや気付きがありそうですね。
バブリー まさにおっしゃるとおりで、それまで自分たちの価値は見た目と考えていたギャルが、社会にとって価値ある存在だと気づき、自己効力感を高められます。今は会議以外にも、老舗酒造メーカーの南部美人と渋谷のギャルコラボで、特別純米酒「YUICHU」を企画開発して商流開拓もしています。
佐藤 商品を通してギャルマインドが広がりますね。これを一過性にしないために心掛けていることは。
バブリー 私たちはギャルマインドを初めて分析し構造化してサービスにした会社です。これはギャルをリスペクトしていたからできたこと。またビジネスでは再現性を持たせることが重要なので、「バイブスを上げる」のも定性的な見せ方ではなく、定量的に可視化してスコアリングする新しいサービスを開発していきます。挑戦を続け、これを海外にも輸出していきたいですね。
佐藤 今後やりたいことは。
バブリー ギャルが世間から評価されないのは意思決定層が一定だから。例えば今の内閣を見ても私は心躍りません。あの場にギャルがいても、宇宙人やAIがいてもいいし、私を永田町に呼んでほしい。私たちは会議を通して、意思決定層の多様化を目指しています。そのためにもまずはギャルマインドを世の中に広めていく。大人になった今はそれが一番やりたいことなので、自分の気持ちに正直に生きたいですね。


